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社説 住宅税制の抜本的改革 恒久的な負担軽減と簡素化議論を

 師走に入り、今年も次年度税制改正へ向けた議論が本格化している。先の衆議院選挙の結果により少数与党となった自由民主党及び公明党は、税制を始め政策の検討に当たって、近年では異例の形となる野党との協議を行ってきた。とはいえ、住宅・不動産分野の税制改正項目については大きな反発や議論を呼ぶことはなく、比較的穏当な検討が進んできたようだ。

 だが、それで本当に良いのか。今年度の税制改正は、激しい議論を交わしてでも、これまでの住宅税制のあり方を改めて見つめ直す好機だったのではないだろうか。

 その最たる対象の一つが、昨年、今年と住宅税制の焦点となった「住宅ローン減税の延長」だ。この特例は、23年度までで一度縮小が決まった後、24年度与党税制改正大綱により「25年度税制改正において検討し、結論を得る」としつつ、24年度の単年に限り先行的に延長された経緯がある。しかし、ここで実質的な延長を決めた理由を素直に受け取れば、期限を短期間に限定する必然性は薄い。

 24年度大綱では、ローン減税延長の理由として「現下の急激な住宅価格の上昇等を踏まえ」としたが、現実として住宅の高騰は続いており、その理由の大部分は資材価格や労務費といった構造的な事業コスト上昇によるものだ。例え今後価格が頭打ちになったとしても、もはや数年程度のスパンで一般購買層の手の届く価格帯にまで下落することは考えにくい。加えて、現在のローン減税は「子育て・若者世帯」の取得する「長期優良住宅やZEH水準」といった省エネ性能の高い住宅を主な対象としている。これらの要件も、短期間で役割を終えるような性質のものではない。少子化対策や脱炭素化は、我が国が半ば恒久的に取り組んでいくべき政策課題であろう。

 つまり、もはやローン減税を短期間の時限措置とし続ける必然性は極めて薄い。そうであるならば、再検討のタイミングを迎えた上に、税制論議の形も変わった今回こそ、恒久化か、少なくとも中期スパンでの措置を本格的に検討する機会となり得たはずだ。

 更に言えば、ローン減税に限らず、住宅関連税制の抜本的見直しによる簡素化を真正面から検討すべき時期が来ているのではないか。業界団体も繰り返し提言しているが、そもそも住宅取得に係る税制は多岐にわたる多重課税である上に、ローン減税以外にも、短期間の延長を繰り返しつつ何十年も継続している税制特例がある。成立当初はさておき、少なくとも現代においてその慣習を続け、複雑化した住宅税制を維持する合理性は乏しい。

 財務省の掲げる「税の三原則」は、「公平、中立」そして「簡素」である。減税措置維持には相応の財源が必要ということは大前提だが、その上で、「ルールを守る」方針を標榜する政府には、原則という〝ルール〟を守った税制度の構築へ向けた議論を強く求めたい。