金利はローン実行時の月の金利が適用されます、と売買契約前に伝えておきたい。
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住宅ローンの金利は上昇局面にある。国債の金利上昇で、長期固定金利は上昇傾向にある中、変動金利もトランプ相互関税による景況判断次第で再度、政策金利が上昇すれば上昇局面に入ってくる。変動金利は昨年からプラス0.4%前後上昇したが、政策金利を2%と目標にしているなら変動金利の上げ幅もプラス1.5%ほどある。結構上がる可能性が強い。
一方で金利が下がる材料がない中ではあるので、買主から住宅ローンのアドバイスを求められたら、「早くお借り入れした方が金利面ではお得ですよね」と伝えてもそう間違いではない。変動か固定か、もう少し様子を見た方が良いか、どちらにしろ買主や検討客から何らかのアドバイスを求められるだろうから、回答とその根拠はしっかり用意をしておきたい。分からなければ上司や先輩に聞いて用意をしておこう。
ローン(融資)の金利は、ローンを実行した月の金利であることが一般的だ。フラット35や市中の金融機関はこの「融資実行時金利」を採用している。金銭消費貸借契約(金消契約)を結んだ時やローン審査の申し込み時の金利ではない。当然、売買契約の締結時の金利でもない。ローンを実行したときの月の金利が支払う金利となる。たとえば売買契約が7月で金消契約が8月、ローン実行が9月となるなら、9月の金利でローンの支払いを行うことになる。
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私たちは「それなら知っていますよ」で終わるが、では顧客はこのことを知っているだろうか。筆者の感覚では2~3割は知らない。金利だけ見ている人が多く、「金利は実行した月のものですよ」と言うと「申し込んだとき(たぶん融資審査)の金利じゃないのですか」と驚き返ってくることがある。
そのため、住宅ローンのアドバイスとして冒頭のようにローン実行時の金利が適用とトラブル防止のため売買契約前に念のため伝えておこう。こう書くのは金利上昇局面だからだ。1~2カ月後の融資実行なら金利の影響は少ないだろうが、建て売りや注文住宅で数カ月から1年後の竣工時の融資実行だと影響が大きいかもしれない。また、顧客の心理に「上がって返せなくなったらどうしよう」と無駄な不安を呼び起こす。それが、売買契約後に金利はローン実行時の月の金利が適用と分かったら、「買わせるために黙っていた」と思う買主もいるかもしれず、「解約したい」と言われてもつまらない。金利の下落や維持局面ではしなかったアドバイスが必要かもしれない。
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【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。