震災復興と原発対応で揺れる今年の夏は、個人も組織も官民の分け隔てなく大規模な節電に取り組む特別な夏になる。
政府が先月、発表した今夏の電力供給力の見通しによれば、東京電力管内では、昨年並みのピークを想定した需要6000万kWに対して供給力は5380万kW。東北電力管内も、想定需要1480万kWに対して供給力は1370万kWにとどまるという。東電管内で10・3%、東北電力管内で7・4%それぞれ電力需要を抑制する必要があると政府は見通しを立てた。
供給力不足に加えて、当然、復興途上にある被災地へ配慮することや、電力の総量に若干の余裕も勘案しなければならい。そうした事情を踏まえて、両管内の電力使用を昨年のピーク時に比べて一律15%削減するという目標を政府は掲げた。特に電気事業法27条による電力使用制限の対象となる、契約電力が500kW以上の大口需要家は、故意による使用制限違反に1時間当たり100万円以下の罰金が課せられる厳しい内容だ。
当初、目標とされた25%削減からは10%引き下げられたとはいえ、ほぼ無制限に近い意識で消費してきた電力利用をここにきて2ケタレベルで、しかも短期間で引き下げることは相当の努力と知恵を伴うことになりそうだ。
大口需要家には罰則も
不動産業界では、テナントが入居するビルや商業施設などの賃貸業で悩ましい問題が浮上している。第一は、昨年のピーク時という基準。テナントビルは、テナントの入居状況をはじめ施設の稼働状況が昨年と今年で違っていて当然。そこに前年ピーク時をベースにした一律の基準をあてはめられることはそぐわない。省エネ対策の進んだビルと、対策が遅れているビルとでは当然、削減できる余力にも大きな格差が生じてくることも考えられる。また節電でテナントの業務に支障きたすようでは、商品競争力の低下も招く恐れがある。
こうした事情に配慮するため、政府は今回の節電対策で緩和措置を設けている。テナントの状況などを理由に15%削減が達成できなかった場合でも、個別の事情をくみ取ったうえで妥当と判断されれば罰則対象から除外することも考えられている。
賃貸ビル特有の事情に加えて、数値目標あり、罰則もありと今夏の節電対策はビル業界には試練であることは間違いないが、国を挙げた取り組みだからこそ、テナントに節電の協力を要請する面ではむしろ追い風となる。節電は長期的な課題であるCO2削減に直結する。テナントとの協力体制を強固にし、同時に検証データやノウハウを蓄積して今後の節電対策を構築する良い機会として取り組むことが重要だ。
社説「住宅新報の提言」