全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)
全宅連は、都道府県の区域を単位とした47の宅地建物取引業協会(宅建協会)を会員としています。これらの会員に所属する構成員(宅建協会の会員である宅地建物取引事業者)は、約10万社であり、不動産業界における名実ともに最大の団体を構成しています。会員所属構成員の多くが中小不動産事業者で、全国的結束によって相互協力の成果をあげています。
■受講の流れ
公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)が、昨年5月からスタートした独自資格「不動産キャリアパーソン」。
不動産取引の基礎から実務的な内容まで網羅されていると好評です。同資格の立ち上げに携わった全宅連・全宅保証人材育成委員長の阪井一仁氏に、フリーアナウンサーの佐藤まり江さんが資格の実施状況、今後の対応等についてインタビューしました。また、実際の受講・利用者の声も取り上げました。
――不動産キャリアパーソン資格制度がスタートして10カ月。実際に受講された方からも様々な反響があったとお聞きしました。具体的に教えて下さい。
「本制度は、不動産取引の基礎的内容を網羅したものであることから、スタート当初は、宅建業従事年数が浅い方、宅地建物取引主任者でない方等が多く受講されるものと考えていました。
しかし実際は、主任者資格者が受講者全体の76%という結果でした(グラフ)。
更に、それらの方々にアンケートした結果、『業務の振り返りができた』『テキストの内容が顧客からの質問に回答する際の参考となった』『ローンの組み方、広告等、講義動画の説明が具体的であった』『マナーに関する知識がこれまで無く、参考になった』といった評価をいただきました」
――早速、実務に役立っているという事ですね。従事年数の浅い方等に対する対応については、いかがお考えですか。
「本制度がスタートして1年足らずの状況ですが、まだまだ『不動産キャリアパーソン』という名称自体を知らない方が多いというのが実感です。チラシ、パンフレット、ポスター等を作成し、あらゆる機会で配布しているほか、今後は資格者が在籍する店頭等に貼付できるステッカーを配布して、更なる周知を図っていきます」
そのような状況ではありますが、企業の個別な取り組みとして、今年4月入社予定の新入社員全員に不動産キャリアパーソンを受講させるといった事例が出始めました。これから不動産業界に就職する方にとっては、入門編的な意味合いで、きっと役立つものと考えます。今後は、経営者にこの取り組みを理解していただくことで、一般従業者への普及は加速的に広がりを見せると思います」
安心・安全の取引を
――このような取り組みをする企業が増えると業界全体の資質向上にもつながりますね。ところで、本制度実施団体である全宅連は、平成24年4月に公益社団法人となり、その1年後に本制度を立ち上げました。本制度は全宅連の重点事業との事ですが、今後の展開については、どのようにお考えですか。
「本制度は、『不動産キャリア』サポート研修制度の第一段階としてスタートしたものです。次のステップとしては、より専門的知識を修得できる内容を構築していかなければなりません。昨今の不動産取引は複雑化し、消費者のニーズも多様化しています。安心・安全な不動産取引の実現に向け、不動産業に従事する者の資質の向上は常に求められる時代です。不動産業が真の信頼産業となっていくには、人『財』の育成が不可欠です」
「また、例えば不動産を購入する消費者にとっても、一定の知識を修得することも必要ではないでしょうか。一生に1回ないし2回といった限られた機会です。納得して購入するための事前準備として、不動産キャリアパーソンの受講も有益かと思います。現に、主婦の方が受けられたという事例も出ています」
講義動画でサポート
――確かに、消費者の方も基礎的な知識があれば、質問するポイントも明確になり、家探しには役立つと思います。私のようなあまり知識がない者が受講しても、しっかり学ぶことはできますか。
「テキストは480ページほどありますが、受講者にはテキストを補足する意味で、テキストの内容を解説した講義動画がインターネットを通じて、いつでも、どこでも視聴が可能です。スマートフォンでも見られますので、通勤等の移動中に視聴している受講生も多いようです。また、単元ごとに理解度をチェックできる確認テストもインターネット上でできるようにしています」
「なお、最後に試験を受けていただくことになりますが、本会が指定する会場で、毎月1回以上全国47都道府県にて開催されます。会場にあるパソコンを使用しての試験ですが、操作方法は試験開始前に会場担当者より説明を致しますので、操作に不安のある方も安心して下さい。試験は、4肢択一式の問題で40問。試験時間は1時間です。7割以上の正答で合格となります」
――私も興味が湧いてきました。最後に阪井委員長より一言お願い致します。
「この資格は、一般消費者も含め不動産取引における基礎知識を修得できるものです。ごく一部の人だけが取得すれば良いというものでなく、取引に関わる人全員が取得することで、安心・安全な不動産取引市場の形成につながるものと思われますので、皆様よろしくお願い致します」
次ページでは、講座を受講・利用している方々の声を紹介します。