本紙も企画テーマとして取り上げたが、今年は太平洋戦争の終戦から80年の節目に当たる。この80年、我が国の夏は常に戦争の記憶や戒めと共にあったと言える。節目ということで、今年は例年以上に〝戦後〟についての報道や言説が多かったように思うが、一方で総理談話発出の是非を始め、永田町界隈では政局ばかりにこだわる動きも散見されたことに、やや残念な印象を受ける。
▼確かに人の意識は、自分に直接関わることや目の前の課題にとらわれやすく、俯瞰(ふかん)的・客観的・中長期的な視点を常に持つことは難しい。異なる意見を冷静に受け止めることも容易ではなく、感情的な反発を招きやすいことは、先の参議院選挙でも如実に示された。ただ、そうした人間心理にあらがうことなく、感情的な対立を深めて行き着く先こそ、80年前の戦争のような悲劇ではないのか。この時期こそ、近視眼的な意識からの脱却を目指す一つの好機としてもらいたい。
▼戦後の住宅政策は、「焼け野原になった我が国の圧倒的な住宅不足の解消」から始まったという。正直、空き家が社会課題化する現代において、当時の実態は想像することも難しい。だが、これも同じことだ。過酷な時代に、国民の住まいの安定を懸命に支えてきた住宅・不動産業界の努力を想像することは、将来の平和な国民生活と住まいを創造する動機となるのではないか。想像力とは、創造力の源である。