日本が抱える不動産問題に立ち向かえ!「空き家」活用のススメ

地価下落率の激しい北海道、広島、岡山。「倶知安」級の地価上昇エリアが生まれる可能性は?

■全国地価下落率ワースト10は北海道に集中

4月に公表された「2019年公示価格」を見ると、地価上昇エリアが地方へと拡大したことが見て取れる。理由は、外国人観光客増加に伴うインバウンド需要。具体的には、北海道スキーリゾートの倶知安町が住宅地・商業地ともに全国地価上昇率1位を獲得した。

倶知安町は、外資マネーがけん引役となり、リゾート地区の従業員向けの住宅需要と外国人の別荘需要がおう盛。その他、北海道新幹線の延伸や高速道路事業の着手なども地価を押し上げた。

一方で、地価の下落率でも北海道が目立つ。商業地のワースト10に7地点、住宅地で2地点という具合だ。北海道は、「日本の地域格差の象徴的な存在」といえるだろう。

2019年公示価格 全国住宅変動率と全国商業地変動率 下位トップ10

国土交通省土地鑑定委員会の分析を見ると、商業地下落率上位である夕張市や美唄市、赤平市は、旧産炭地を中心とした地域であり、過疎化による地域経済の衰退と空洞化が進んでいる。

古平町でも、水産加工組合の破綻や地元の建設事業者の倒産などで地域経済が疲弊。地価下落の大きな要因となった。北海道胆振東部地震の発生も、商業地の需要低迷に拍車をかけた。

住宅地では、かつては水産加工業が盛んだった古平町がランクイン。人口減少と高齢化率の高さにより地元経済が停滞したのが要因だ。三笠市では、旧産炭エリアでの過疎化が進んだことで人口減少率が過去5年間で11%を超え、高齢化率も46%超の水準に。これらに伴う小中学校の統廃合で住宅需要も低迷している。また、厚真町や安平町、むかわ町は、胆振東部地震の影響で町外への転出が増加したことで、住宅地の流通が停滞したことが大きい。

■土地価値の下落には被災の影響も

北海道に次いで下落地点で目立ったのが岡山・広島の中国地方。広島県では、呉と東広島の両市の下落幅が拡大した。昨年7月の豪雨被害の影響は大きく、呉市は被災地点での下落幅が拡大した。

岡山県では、住宅地の下落率ワースト3を倉敷市が占めた。倉敷市は、県全体の工業品出荷額の約半分を占めるものの、人口の流入が見られないことが地価を押し下げている。昨年7月の豪雨被害を受けた真備地区の浸水地点では、17%台の大幅な下落となった。

2019年公示価格 全国住宅変動率と全国商業地変動率 下位トップ10

▲広島・呉はかつて軍港として栄えた。「大和ミュージアム」は観光資源の一つ

首都圏でも、神奈川県三浦市が住宅地と商業地で1地点ずつ全国下落率10位以内に入った。人口減少と高齢化により市街地の空洞化が進んでいるためだ。三浦市は、県内市町村での商業地下落率1位となっている。

■ボトム圏から“浮き上がる街”を探せ

下落した町の特徴を見ていくと、人口減少、高齢化、被災などがカギとなったのがわかる。これらの街はこの先も沈んでいくのか、それとも、倶知安のように何らかのきっかけがあれば、上昇する可能性を秘めているのだろうか?

三浦市と同じ神奈川県にある鎌倉市は、国内外から観光客が訪れ、近年はブランド化している。不動産価格も大都市部並の水準だ。これは、市が訪日客誘致とともに、市の人口流出防止策を打ち出した効果が少なくないとみられる。例えば、元気な高齢者が活躍できる場所や新たな観光名所の創出、さらには、被災に強い街づくりにも熱心だ。その結果、都心部から離れていても地ぐらいが上がってきた。

現在の地価がボトム圏の街であっても、問題点が解消される(将来性がある)見込みがあるエリアは、倶知安のように“化ける”かもしれない。そのような視点で今は元気のない街を見ていく視点も、不動産関係者においては重要といえそうだ。

(参照:全国地価下落率ワースト10は北海道に集中!次いで岡山、広島。下落エリアの洗い出しで新たな「倶知安」を発掘?

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