居酒屋の詩 記事一覧
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居酒屋の詩 (91) 酒呑みは哀しからずや人の世の 情けを借りて街をただよう
久しぶりに人形町に足を向けた。旨い酒と刺し身を安い料金で食べさせる「たき」が張り紙もなく店を閉めている。電話をしても出ない。何があったのかと気にしつつ、都営浅草線寄りの「ザ・築地」(写真)へ。相撲好き(続く) -
居酒屋の詩 (90) 家であれ居酒屋であれ我が居場所 窓にやさしき春雨の降る
四ツ谷といえば、「しんみち通り」が有名だが、新宿通りにある「のぶさん」も若者に人気がある。連日大盛況で、新型コロナの影響はみじんも感じられない。今は、ジムビームのハイボールが一杯50円という大サービス(続く) -
居酒屋の詩 (89) 寂しさはその店だからとも言えず さまよう街の春の夕暮れ
地下鉄丸ノ内線・新高円寺にある大幸住宅の「大幸ホール」では時折、全国不動産コンサルティング協会(全コ協)や全国空き家相談士協会(いずれも一般社団法人で会長は林直清氏=大幸住宅会長)の催し物が開かれる。先(続く) -
居酒屋の詩 88 ともかくも理想の店を探さんと 踏み入りし路地白菊の花
新橋・烏森口の「野崎酒店」はまちがいなくうまい日本酒が飲める店である。一見間口の狭い店で1階はいつも混んでいる。地下はテーブル席だけの静かな空間だが、こちらも夜8時過ぎにはほぼ満席になる。まだ、案内さ(続く) -
居酒屋の詩 (87) 鉢植えの梅つつましく我もまた 今宵の酒にひとり和まむ
総武線浅草橋駅のガード下にある小池寿司は何百年も続く老舗だが、格式張った高級店ではない。4代目だというご主人と息子さん、それに女将さんが切り盛りするアットホームな店である。居酒屋通いが続くと、時折こ(続く) -
居酒屋の詩 (86) 好きな店何度も通いまた通う 求めてやまぬ胸の渇きよ
いい居酒屋は客にあまり干渉しないものだ。ずっと座っていても誰からも咎められない陽だまりのベンチのような居心地が理想だ。座わるやいなや、すぐに注文を取りに来るのは興ざめである。一呼吸おいて近づき、一品(続く) -
居酒屋の詩 (85) 駅裏を出でて見る街寒々と 心も冷えてネオンも寂し
JR信濃町駅前は数軒の店があるだけで、夜はどこか物さびしい。しかし、小さなビルの地下飲食街にある「じんとくや」は小笠原料理を出す小粋な店である。 小笠原出身の店長はどこか一流の高級店で修行を重ねたよ(続く) -
居酒屋の詩 (36) 吹く風のさそふともなき梢より 落つる枯れ葉の音ぞ淋しき
100点満点の店など存在しない。それは分かっているが、通うにつれ満足していた店にも不満が出てくる。例えば私が好むカウンター席だが、料理をするときに火の上でフライパンを五徳にこすりつける音、皿を洗う音、(続く) -
居酒屋の詩 (84) 久々の宴の苑に香る梅 外の闇より浮かび出でしか
夜遅くから東京も大雪になると見られていた1月27日、我が新聞部の新年会が開かれた。冷たい雨が降りそそぐ中、虎ノ門ヒルズ近くの「厨」に集結。昔と比べると、同じ部署仲間による飲み会が随分と少なくなったよう(続く) -
居酒屋の詩 (82) ここに居て通りの人をながむれば 今日かりそめの宿とおもふに
初対面の人間に対する印象は最初の3秒で決まるという。初めて入った居酒屋の印象は1秒で決まる。というのも、店員が「お一人様ですか」と聞いてくるその態度で、すべてが分かるからだ。感謝の気持ちがひとかけらも(続く) -
居酒屋の詩 (83) みがかずば客足日毎遠のけり 学びの道もまたかくあらん
最近は居酒屋に行く人が減っているそうだ。その理由の一つに近年は全般的傾向として料金の割高感がある。だから、サブスクリプション(定額制)で見た目の割安感を強調し、なんとか客足を確保しようとする店が増え(続く) -
居酒屋の詩 (81) 初詣飲めば楽しき下町で 年は変われど変わらぬ人情
AIが人間の仕事をどんどん奪っていく。そのスピードは今後加速し、今の子供たちが大人になる頃には、現存する仕事の大半がなくなっているかもしれないと言われている。そんな気ぜわしい世の中だからこそ、昭和を感(続く) -
居酒屋の詩 (80) 今一つ心に落ちぬ近代化 タッチパネルより優しい笑顔
再開発で京橋に誕生した「東京スクエアガーデン」の地下商店街にある「山陰海鮮炉端かば」は総席数85の大型店。外から見える入り口近くのカウンター席(写真)の雰囲気に引き寄せられて初入店。タッチパネルで注文す(続く) -
居酒屋の詩 (79) 常連も店の夫婦も年を取り 変らぬものはお新香の味
その店のレベルを手っ取り早く測る方法は、「お新香」を注文することである。自家製のお新香があることがまず大前提で、あとは味と量である。どんなにおいしくても量が少なくては、お新香の醍醐味がない。器に山盛(続く) -
居酒屋の詩 (78) 酒飲みて更けゆく夜と街の灯に 揺れる人影夢かうつつか
大衆酒場だが味がよく、店員も感じがいい。つまり、コストパフォーマンスのよさを痛烈に感じる店である。刺身で旨い日本酒が飲みたくなったら、ここ「三陸天海のろばた」だ。日本橋人形町にある。いつ行ってもサラ(続く) -
居酒屋の詩 (77) 「地鶏や」に 働く人の 志 熱く優しく 我をいやす日
その店は最初から感じがよかった。店の造りも、接客マナーも客質までをも心地良く受け入れることができた。オーダーをしてビールや料理が出てくるまでの時間も程よく気分がいい。メニュー類を見ると、チェーン店の(続く) -
居酒屋の詩 (76) 秋風よ情けあらば伝えてよ 今日より我は君の敵なり
日本のサラリーマンは一人で呑みにいくことはあまりないようだ。しかし、酒は自分と語り合うとき、最もふさわしい友である。西部劇では酒場のカウンターで荒くれ男が一人で飲んでいる。そして何かにじっと耐えてい(続く) -
居酒屋の詩 (75) 下町は秋ぞ寂しさまさりける 人ゆきかえど酒舌に染む
居酒屋を探していると妙に寂しい町並みに出くわすことがある。有楽町線の新富町駅から日比谷線八丁堀駅にかけての一帯もそんな風情だ。不思議なのはさほど人通りがあるようには見えないのに小体の居酒屋が所々に軒(続く) -
居酒屋の詩 (74) 惜しめども今は消えゆく縄暖簾 白地の布もいさぎよしかな
初めて入る居酒屋を選ぶポイントは(1)店構え(2)暖簾の美しさ(3)店名の順となる。地下鉄丸ノ内線新高円寺駅近くにある「幸縁」を選んだときの要素は(2)と(3)。高円寺ゆえに「幸縁」であることはすぐに分かったが、(続く) -
居酒屋の詩 (73) 居酒屋のルーツと見ゆる立ち呑みは こころ浮かれて月夜に揺れて
立ち呑みには独特の風情がある。本当の酒好きがやってくるためか、酒もつまみも値段の割にはうまいという印象だ。「晩杯屋」もその一つだが(19年5月14日号で東京・飯田橋店を紹介)、「四ッ谷しんみち通り」にある(続く)