居酒屋の詩 記事一覧
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居酒屋の詩 (52) TAMビルや再開発に消ゆる灯よ 都会はものを思わざりけり
へぎそばがおいしい「越佐庵新宿西口店」に数カ月ぶりに行った。カウンター席の向かいで料理をつくる粋なマスターが店の雰囲気を引き締めている。店員の女性陣もきびきびとしていて感じがいい。「本多さん、お久し(続く) -
居酒屋の詩 51 活気なき酒場の隅に身を処して ひとりかなしく今日も怒れり
総武線沿線に展開する「みんなの居酒屋 ありがとう」のファンになった私は先日、亀戸店に行ってみた。夜9時を回っていたと思うが、席は7割がた埋まっていた。駅前のバスロータリーに面したビルの7階にあったので(続く) -
居酒屋の詩 (50) 「この味がいいね」と君が言ったのは 一年前のこの立ち飲み屋
かねてから立ち飲み屋を利用する人たちの利用目的に興味があった。観察によれば、一人客並みに多いのが二人客で、その多くは男同士だが興味深いのはその取り合わせの多彩さである。会社の同僚はさほど多くなく、競(続く) -
居酒屋の詩 (49) 春雨にぬれてたづねむけん房の 赤いネオンと白提灯
JR総武線小岩駅南口の「けん房」は釣り好きの店長が経営する小粋な店。当然魚料理が旨い。釣り仲間らしい常連客がしばしばやってくる。小岩駅周辺は北口も南口も商店街が延びていて飲食店の数は半端ではない。そん(続く) -
居酒屋の詩 (47) 大海の磯もとどろに寄する波 割れて砕けて裂けて散るかも
18年10月23日号で紹介した東京・茅場町にある「炭とやまなし」が4月21日に1周年を迎えた。それを記念して先週は生ビールとサワードリンクが1杯100円という大サービス。店内はいつにも増して活気があふれていた。(続く) -
居酒屋の詩 (46) 賢しみと物言うよりは酒飲みて 酔(えい)泣きするしまさりたるらし
総武線沿線に10店舗以上を運営する居酒屋「ありがとう」。その名が示すように客への感謝の気持ちを忘れないことを経営理念としている。サービス業として当たり前の心掛けとはいえ、それを自然体で実践できている店(続く) -
居酒屋の詩 (45) 曇りなき心の月を先立てて 浮き世の闇を照らしてぞ行く
赤々と新橋の夜の闇を照らし出す「ゆうき家・日比谷口店」の看板が妙に艶めかしい。ここは、以前八丁堀の店で懇意にしていた板前のKさんが先頃転職した先の居酒屋である。 いかにもサラリーマンの街といった(続く) -
居酒屋の詩 (44) 願わくは花の下にて夢見なむ 若き乙女の旅始まりしころ
4月中旬の暖かさとなった3月25日の夕刻。本紙でも時々執筆をお願いしているフリーライターの玉城麻子氏と地下鉄日比谷線築地駅で待ち合わせ。向かったのは新富町寄りの居酒屋「元帥」。築地に事務所がある玉城氏お(続く) -
居酒屋の詩 (43) 水仙の香り差し込む春の夜の 酒はしづかに飲むべかりけれ
春に咲く花は春雨のように柔らかい。その柔らかな春の香りにつつまれて一人静かに飲む酒のなんとふくよかなことか。だから、バカ騒ぎをする客がめったに来ない居酒屋には希少価値がある。 東京メトロ八丁堀駅(続く) -
居酒屋の詩 (42) 牡丹花は咲き定まりて静かなり 花の占めたる位置のたしかさ
営業歴45年、毎日地元客だけで満席になる居酒屋「三ツ峰」が東京・西新井大師のそばにある。地域住民の社交場のような雰囲気だ。地元に役立つことをモットーにしている不動産会社の北澤商事はこのほど、その売りに(続く) -
居酒屋の詩 (41) 輪転機今こそ響けうれしくも 東京版に雪のふりいづ
新聞記者の仕事は、東京版(最終版)の輪転機が回り出すと、やっと一区切りつく。新人だった頃、初めて刷り出しに立ち会ったときの感動は忘れない。部長がOKを出すと、ゆっくりと回り出した輪転機が徐々に回転速度を(続く) -
居酒屋の詩 (40) 東風(こち)吹かばにほいおこせよ梅の花 あるじなしとて春を忘るな
今頃の季節になると、かつて京王線笹塚駅前の商店街にあった居酒屋「千歳鶴」を思い出す。きっぷのいい女将さんは花が好きで、いつ行っても季節の花が飾られていた。特に春先には、分厚いヒノキの一枚板でできたカ(続く) -
居酒屋の詩 (39) 吉野山去年の枝折の路かへて まだ見ぬ方の花を尋ねむ
毎年、弁護士の江口正夫氏を囲んで飲む会がこの季節に開かれる。今年は東京・新橋の居酒屋「隠れ野」が会場となった。もともとは定期借地権が縁で始まった会だから長い歴史がある。ところが、「江口氏はまったく年(続く) -
居酒屋の詩 (38) うすくこき野辺の緑の若草に 跡までみゆる雪のむら消え
居酒屋の料理人と親しくなることは時折ある。その中の一人が、2月末で店を辞める。足掛け3年は通っただろうか。妙に馬が合い楽しい時間を過ごしてきた。辞める理由を聞かないのが流儀だ。 おそらく、私の足も遠(続く) -
居酒屋の詩 (37) 君ならで誰にか見せむ梅の花 色をも香をも知る人ぞ知る
東京・四ツ谷の「しんみち通り」は学生もいればサラリーマンも行き交う庶民の街。ただその中で、やや異色の焼き鳥店がある。「今井屋本店」である。そのコンセプトは「親しい友人や家族や恋人たちと一緒に食事がで(続く) -
居酒屋の詩 (35) 冬ながら 空より花の 散り来るは 窓のあなたは 春にやあるらん
幅広のカウンター、そこに置かれた大皿料理、黒板に書かれたメニューはママさんの気分で時々変わる。JR総武線津田沼駅北口から線路沿いに船橋方向に少し戻ったところにある「おでん祭茶屋」は開業して約20年になる(続く) -
居酒屋の詩 (34) 荒川の若草萌えてなほ寒し 三日月の今宵どこぞさすらう
JRの某駅前にあるもつ焼きの店。もう何年も前だが開店当初は夫婦で経営しており、接客業に慣れていない固さはあったが味がよかった。ただ、1坪にも満たない狭い店でカウンターのみ。それも客が椅子を引いて座ると(続く) -
居酒屋の詩 (33) 山や雪知らぬ鳥鳴く都かな 酒場の隅で一人鳴く我
京成西船駅前の「今ちゃん」が閉店し、行き場を失った元常連客たちの放浪が始まっている。毎日のように顔を出していた証券マンのSさんに昨年暮れ電話をすると、やはり元常連のMさんとOさんの3人で、原木中山の「鯛(続く) -
居酒屋の詩 32 月さやか一人夜道に酒買う我 懺悔の心かなしかれども
一人で気軽に入れる馴染みの寿司屋があれば、それだけで寒い冬の夜でも楽しく帰ることができる。居酒屋は〝夫婦で経営する店にハズレなし〟が持論だが、寿司屋にもそれは当てはまる。お客さんに愛される店にしたい(続く) -
居酒屋の詩 (31) 焼き鳥「博多や」(東京/高円寺) 若者たちが楽しそうに働く姿が快い
東京・中野での仕事帰りにJR中央線の高円寺駅近くにある焼き鳥屋「博多や」に行く。前シリーズ「今宵も一献」(18年1月16日号)に登場した店である。相変わらず若い店員たちの元気のよさが快い。大声を張り上げるわ(続く)