3月27日、東京都中央区晴海の東京2020五輪選手村跡地で「東京晴海水素ステーション」が開所した。国内で初めて、街区への水素供給を実用段階で行う点が大きな特徴であり、水素供給拠点としても国内最大級の施設。隣接する「ハルミフラッグ」の各街区に水素を供給し、マンションや商業施設などの共用部等でエネルギーとして利用する。東京都の整備計画を受け、都と東京ガスを代表とする民間企業6社が官民連携により取り組んだ事業で、同ステーションはENEOSが整備、運営する。
「東京晴海水素ステーション」は、ENEOSがこれまで手掛けてきた燃料電池車両への水素供給に加えて、道路下に敷設したパイプラインによって街に水素を送る役割を担う。供給された水素は、要所に設置した「純水素型燃料電池発電設備」(以下、燃料電池)によって電力に変換され、通常の系統電力と混合して使用する仕組みだ。
大手ディベロッパー10社が手掛けた、分譲マンションを中心とする大型複合開発エリア「ハルミフラッグ」の全域をカバーしており、住宅街区と商業棟の計5カ所に設置された燃料電池の出力は合計で22キロワット時。供給された水素の費用は、通常の電力と同様に各建物の居住者や所有者が負担する。
都の整備計画受け実現
今回の取り組みは、東京五輪の大会車両として使用された燃料電池車への水素供給拠点を移転・拡大し、新たな施設として整備した事業。都が17年3月に策定した「選手村地区エネルギー整備計画」に基づき、公募により選定された民間企業6社と都が18年に基本協定を締結して、各担当分野で準備を進めてきた。
水素ステーションを整備・運営するENEOSのほか、代表企業の東京ガスが参画企業間の業務調整等を行い、同社の100%子会社・晴海エコエネルギー(東京都港区)が水素パイプラインと燃料電池の整備、街区への水素供給を担当。燃料電池の開発は、パナソニック(住宅街区用)と、東芝及び東芝エネルギーシステム(共に商業用等)が手掛けた。
都都市整備局の担当者は、今後の街区・エリア単位での水素供給網整備に関して、「現時点で決定している計画等はないが、今回の事例をモデルとした取り組みの広がりに期待をしている」と述べた。
都が水素普及へ予算増
3月27日には、同ステーションの開所式を開催。主催者であるENEOSの藤山優一郎常務のほか、来賓として小池百合子都知事や岩田和親経済産業副大臣、山本泰人中央区長、同整備計画参画企業の各代表らが出席した。
小池都知事はあいさつで、「この施設が、水素エネルギーの活用と地域コミュニティを支える拠点へと育ってくれることを期待する。都も水素利用の普及と社会実装の加速へ向けて力を入れており、来年度予算では(前年度比)倍増となる200億円を計画している」と発言。岩田経産副大臣は「国としても、水素活用に向けた法案を今国会に提出中であり、水素ステーションのマルチ化も推進してしている。今後も、〝水素社会〟の実現へまい進していく」と述べた。
写真トップは、開所式典での小池都知事(中央)らによるテープカット