東アジアでの国際都市間競争ではないが、少子高齢化による人口減少で、例えば、首都圏の住宅地などでもこの先、地域間による競争が激しくなりそうだ。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、約1億2800万台の現在の人口は徐々に減り続け、50年には1億人を割り込む。人口減少社会は住宅・不動産業にとって、市場の縮小だけでなく、地域の衰退をも意味する。
数十年先にピークを迎える人口減少社会をどう生きていくか。地域産業と言われる住宅・不動産業、とりわけ中小・中堅企業にとっては大きな問題である。縮小すると見られる国内需要を果たして、より深く掘り起こすことができるかどうか。地盤とする地域周辺でより強固な基盤を築き上げることができるかどうかが鍵だ。
地域でのビジネスが成り立つには、地域が活性化していることが必要だ。他のエリアと比べて衰退して、流入人口が大きくマイナスとなっているようでは難しい。活性化を図りたいのは、地域間競争にさらされる地元市区町村も同じだ。生命線はそのまちづくり方針と施策が握るとしても、行政と地域産業界は運命共同体のような関係でもある。活力と魅力のあるまちづくりに協働して取り組まないと共倒れになるからだ。
社会貢献を存在意義に
では、活性化策はあるのかというと妙案はない。人口構造からすると、活性化の鍵は高齢者や単身者など様々な層をまちに呼び込むことができるかにかかっているように見える。その意味で、賃貸住宅から分譲マンション、一戸建て、更に高齢者住宅までを取り扱い、様々な年齢層、所得層の需要に対応する住宅・不動産業は、まち活性化のど真ん中に位置する存在でもある。全体像を描くのは地元行政だが、高齢化が進む現状を受け入れた上で、具体的施策を推進するには民間企業の知恵も必要だ。
既に、地域貢献・社会貢献活動を自らの存在意義として取り組んでいる企業が増えていることは心強い。例えば、千葉県の大里綜合管理や横浜市のリストのように街の清掃活動を10年以上も続けている企業もある。そうした地域と一体になった取り組みが各地で増えることを期待したい。
有名住宅地を対象にした人気投票のアンケートが時々話題になるが、対照的に〝名はなくても、住んで初めて分かる心地いいまち〟は幾つもある。高齢者を温かく迎え入れるまち、若者も子供たちも元気で交流できるまち、そんなまちが増えてほしい。人口減少社会に備え、地域を挙げて活性化を図るまちが脚光を浴びるように。