どうやら英語というものが、不動産ビジネスの現場に必要不可欠になってきそうである。国土交通省は、報道発表資料を日本語のほか英語で併記するようになった。
また同省のホームページでは、地価公示の内容を英語版でも閲覧することができる。日常生活で英語が必要な場面はそうそうはないが、こうした対応は、グローバル化が進む中で、まずは歓迎すべきものであろう。
文化にかかわる
最近になって小学校でも英語教育がなされるなど、国を挙げた取り組みが行われるようになってきている。それでも圧倒的多数の国民は英語が達者ではない。無論、多くの人々にとって、英語は必要ではないが、グローバル化が進むビジネス・シーンでは異なる。
とりわけ不動産の証券化が進展していく中で、不動産分野における英語は欠かせなくなった。とはいえ各国ともに特有の慣習がある「不動産」は、なかなか手ごわい。我が国を例にとっても、敷金や保証金などは海外には理解されにくいもののようだ。
仲介の分野においてはどうだろうか。こちらも安閑とはしていられない。英語に限らないが、外国人の流入が増え、賃貸住宅を適切にあっせんしなければならないといった課題がある。
現在は一部の地域や、特定の仲介業者に片寄った面があるが、次第に広がりを見せることが予想され、語学習得は欠かせなくなる。
試される国語力
国際展開で言えば、インバウンドといわれる海外からわが国への投資と、アウトバウンドといわれる海外への展開といった2つの側面がある。
このうち、インバウンドについては、英語のコミュニケーション能力を高めるほか、各種レポートなどを英語版にしておくことや、不動産の慣習も英訳しなければならない。
一方、アウトバウンドはどうか。タイやベトナムなど東アジアへの進出は、目を見張る勢いで増えている。アジアン・デファクト・スタンダードという言い方もされている。国としても、持続的な成長を目指す観点から積極的に取り組んでいる。
この場合、共通言語としては英語がまず第1になるのかもしれないが、相手国の実情などを、より深く理解するためには現地の言語が最も適している。
そして東アジアの中で、英語が国語の一部とされているのはシンガポールくらいで、他の諸国はそれぞれ固有の言語を持っている。こうなると言語の問題は果てがない。
語学の習得には、時間をかけて取り組むしかない。もちろん正しい日本語を習熟していることが前提であることを忘れてはいけないだろう。言葉の壁を乗り越えても、その先の魅力がないというのでは、少し情けない。