20年東京五輪・パラリンピックの招致が決まってから2年余。残念ながらムードは盛り上がっているとはいえない。新国立競技場問題とエンブレム問題が招いた空白が要因だ。緊縮財政の中での杜撰な取り組みに厳しい国民の目が向けられた結果でもある。その原因究明と責任の追求は十分とはいえないが、新国立競技場もエンブレムもようやく、やり直しのコンペが行われて動き出す。
▼五輪開催の20年は、東京各地で進められる再開発計画など様々なプロジェクトの一つの目標でもある。新しい街を完成させて、海外の人たちに見てもらいたいという思いだが、残された時間は5年を切った。事業によって余裕度合いは異なるが、いずれ突貫工事となるのは避けられない。工事を発注する事業者と請け負う建設会社。更に実際の現場工事を行う一次下請けや二次下請け。元請けを頂点に重層構造の上に成り立っているのが建設業界。五輪には、確実な工事を担保できる時間的、体制的な余裕を持って臨むことができるのかどうか。
▼折から、横浜のマンション傾き問題が発生。構造的問題に発展しつつある。実は、重層構造は幅広い業界に共通した問題である。工期や納期が厳しいほど、現場にしわ寄せがいく。長年、事業を支える第一線をないがしろにしてきたツケでもある。改めて現場仕事を大事にすること、これこそ「ものつくりの信用」を復活させる鍵である。