新年度入りした4月、期待と志を持った新入社員が多くの住宅・不動産会社に迎えられた。人口減少、少子高齢化という社会構造が大きく変化を見せる中、住宅・不動産業も構造変化に即応した変革を迫られており、企業側は新人社員を一日も早く戦力とし、独り立ちできるように人材の育成に引き続き力を注がなければならない。
16年春入社の就職戦線は、昨年に引き続き「超売り手市場」だった。経団連が大手企業の面接開始時期をそれまでの4月から8月に変更したこともあって、採用側にも学生側にも少なからず混乱を及ぼした。本社が主要住宅・不動産会社に行った採用実績アンケートによると、そうした状況下にありながらも7割の企業が予定通りの人員を採用できたと回答。前の年度より採用人員を増やした企業は3分の2を占め、次年度についても横ばいから採用増を計画する企業は9割を超えた。大手・中堅に限ればほぼ計画通りの採用ができ、採用意欲は引き続き高まりを見せているといえる。
業界を目指す若者を
しかしその一方で、予想以上に内定辞退が多く発生したこと、売り手市場下でエントリー数が減少した企業が多かったこと、住宅会社では慢性的な技術系の人材不足といった課題も多く聞かれた。例年、他業界に比べて新卒採用には苦戦するだけに、業界を目指してくれる学生の一層のボトムアップは共通した課題だ。
そうした中、昨年度は宅地建物取引主任者から宅地建物取引士に業界必須の資格の名称が変更され、文字通り不動産取引の専門家としての位置付けがより明確になった。当然、業界を見る外部の目線は以前にも増して厳しいものとなったが、だからこそ業界を志す気概を持った学生が多く後に続いてくれることに期待したい。そしてその鍵は、企業側のこれからの人材育成が握っている。
人材育成においては、長年の業界課題でもある定着率を上げることが重要なポイントだ。そのためにも、この先ますます求められるコンサルティング力に優れた、自らの仕事に誇りを持った人材を育て上げることや、属する組織をより魅力あるものにしなければならない。
社会で震災の経験生かす
11年の東日本大震災から5年の月日が経ち、人と人とのつながりや地域・社会の大切さについて身を持って経験した若者が昨今、社会に巣立っている。「社会や人のためになる仕事がしたい」という意識が学生や若者の間で広がりを見せていることがその証で、心強い限りだ。企業側も、こうした若者の期待や志をしっかりと受け止めて、個々人に成長を促す環境づくりに努めることが求められる。
生活、暮らしの基盤である不動産の取引実務の習得を第一歩に、地域・社会に貢献できる人材を多く育成することも、業界の重要な使命だ。