重大ニュースにはならなくても、今年の〝重い〟ニュースとして取り上げたいのが末期のがん患者向けサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)が名古屋に開設されたことである(10月)。遅々として進まない「地域包括ケア」に業を煮やした名古屋大教授の医師が自ら立ち上げたプロジェクトが実現した。
▼厚労省は医療費を削減するため入院患者の在院日数を減らす政策を続けている。そのため退院しても医療依存度が高く自宅には戻れない人が増加している。「そうした医療・介護難民を受け入れる住宅(サ高住)を増やさなければ社会が崩壊する」と同教授は強い危機感を示す。
▼今後大都市圏では75歳以上の後期高齢者が爆発的に増える。25年までの10年間で東京都は50万人、神奈川県は47万人、大阪府は46万人増え、この3大都市だけで約500万人にも達する。東京都は35年に高齢者の4人に1人が単身世帯になる。
▼地域包括ケアを支えるのが在宅での医療と介護である。超高齢社会では住まいの生活基盤としての重みが一段と増す。その意味で日本医師会、日本居住福祉学会、埼玉県住まいづくり協議会が連携し、今年10月に「医療と住環境」をテーマにしたフォーラムを開いたことは隠れた重大ニュースではなかったか。不透明さを増す日本。先を見越すには大きなニュースだけでなく、隠れた事象にも目を向けたい。