空き家が社会問題になるほど増えているのは、これまでの住まいの〝あり方〟が、少しずつ時代と齟齬をきたしつつあるからだ。既に発生してしまっている空き家の活用方法を考えるのも大事だが、これから供給する住まいについて、将来空き家にならないように、そのあり方を考えることこそ重要である。
▼これまで供給されてきた住宅が時代に合わなくなってきたと思う点はいくつかある。1つ目は、「所有」を強く意識した時代の名残りだろう、家全体がいまだに〝閉じられた〟造りになっていることである。これからは近隣住民との「共助・互助」の時代だから、家の造り方は外に向かって開かれているべきである。
▼2つ目は、現代の住まいは住む人の心を守るものになっていなければならない。なぜなら、企業社会にあって近年、心の不調を訴える社員が増えている。社内のメンタルヘルス対策を推進するため、「メンタルヘルス・マネジメント検定試験」などを管理職に受験させる企業が増えているという。せめて家が会社での心の疲れを癒やしてくれる場であることは、現代における住まいの大事な使命と思われる。
▼住まいが変われば暮らしが変わり、社会が変わる。単身世帯が既に全世帯の35%にも達している異常な社会もなんとかしなければならない。一人暮らしの人たちが疑似家族のように暮らすシェアハウスも新たな住まいのあり方となる。