創業から18期目を迎えたリビン・テクノロジーズ(東京都中央区)。不動産所有者向けの比較査定サイト「リビンマッチ」を運営し、19年6月には東証マザーズに上場した。成長投資を強化する同社の川合大無社長(写真)に今後の展望について聞いた。
――事業環境と主力の「リビンマッチ」について。
04年にインターネット広告代理店として創業した。06年に差別化を図るため立ち上げた不動産一括査定サイトが主力のメディア事業となる。
「リビンマッチ」は、不動産売却を中心に、買い取りや土地活用、賃貸管理、リノベーション、リースバックなど周辺サービスを集めたポータルサイトだ。不動産所有者の希望条件にマッチした企業を抽出し、加盟企業から問い合わせ件数に応じた利用料を徴収する仕組みを取る。現在の平均利用者像は55歳男性。住宅・不動産会社2600事業所で利用され、年間12万物件のマッチングが発生している。このサービスの肝となるのがエンドユーザーの集客と加盟企業の増加であり、そのためのサービス拡充やブランディング強化を進めている。
――前期(20年9月期)の振り返りと、重点施策は。
成長投資の1年と位置付け、その成果を得ることができた。主力の「リビンマッチ」の売り上げが堅調で、営業収益は過去最高の24.4億円(前年同期比30.5%増)。四半期ペースでも順調に積み上がり、新型コロナによる損失を企業努力が上回ったと受け止めている。
期初に定めたのは、人材投資、ブランディング投資、営業力強化、新ビジネスの4点だ。人員増強では加盟事業者の獲得基盤およびサービス開発力を強化するため45名を採用。また、船橋、福山、さいたま、横浜に営業拠点を開設し、全国8拠点体制とした。新規店開拓および既存店フォローには対面営業が不可欠と考えるからだ。
更に営業拠点がある大都市圏を中心にテレビCMを開始するなどブランディングを強化した結果、「リビンマッチ」が不動産売却査定サイトで全国認知度1位を獲得した。このほか、各社との事業提携を推進すると共に、査定書作成やSMS追客、オンライン商談など不動産会社の営業支援サービスを拡充。一括査定サイトというメディアから不動産DX領域に進出した1年だった。
――今期(21年9月期)の取り組みについて。
中長期的な成長に向けた〝成長インフラづくり〟だった前期を踏まえ、今期は〝成長エンジンづくり〟と位置付ける。今期も積極的な成長投資を継続しながら、増収増益を目指す。具体的には人材、サービス拡充、ブランディング、M&Aの4つだ。特にM&A・事業提携を推進し、現行の不動産売却をベースとしたマッチングサービスから不動産取引全般、不動産テック領域へ事業を拡大していく。 前期で倍増した営業拠点を強化するため増員も図り、現在の営業担当者45名から80名体制を目指していく。今春には新卒社員が二十数名入社する予定だが、採用環境はここ数年でもいい。背景には19年の東証マザーズ上場や、他の企業がコロナ禍で採用を控えている影響もあると見る。ベンチャー精神を持つ人材と共に事業を成長させていく。