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新型コロナで苦境続く商業施設 打開にデジタルを活用

 新型コロナ感染防止策による人の流れが抑制され、苦境が続く商業施設。一方、巣ごもり需要を捉えてEC(電子商取引)は活況だ。そのような中、商業施設内にECとの融合を図る施設を設置する動きが出ている。また、デジタル技術を活用し、商業施設のテナントや飲食店の活性化を図る試みも始まった。デジタルが商業施設の危機を救うのだろうか。最近の事例を取材した。(桑島良紀)

商業施設内にECのリアル拠点

 三井不動産は、商業施設「三井ショッピングパーク ららぽーとTOKYO-BAY」(千葉県船橋市)の北館1階に、「LaLaport CLOSET(ららぽーとクローゼット)」を3月18日にオープンした。「ららぽーとクローゼット」は店舗跡の400m2の空間に、ECサイト「&mall」で購入した商品の受け取りや試着ができる「&mall DESK」を設置。加えて、ウェブで予約して館内の複数のショップの衣類の試着や、ワコールが開発した3Dデータ計測による自分の体型に合わせたファッションアドバイスを行うサービスを提供する。

 試着室は、家族や友人と一緒に入る広さを確保。試着した商品に付いているQRコードを読み込むと、「&mall」で購入ができ、手ぶらでの買い物が可能だ。また、キッズスペースやカフェラウンジも併設し、試着中も家族が楽しめる工夫をしている。

 今回の取り組みは、「&mall DESK」強化の一環。同社では利用実績を踏まえて、他の「ららぽーと」での展開を検討している。

 また、三菱地所は、(株)カウンターワークス、(株)SPACERと共に、新丸ビル(東京都千代田区)の3階にある商業エリアのアナトリウムで、D2C(消費者との直接取引、今週のことば)ブランドの商品を試着、購入が可能な実証実験を3月23日から4月19日まで実施した。

 D2Cブランドは、自社サイトで直接消費者に販売しているが、リアルな場での販売機会が少なく、試着や実物を見て購入したいという消費者ニーズを捉えることができなかった。そこで、商業施設のリアルな場とデジタル購買の融合を狙った。また、三菱地所は既存テナントへの送客、回遊効果も期待した。

 利用者の反応としては、「今まで気になっていたけど、直接触ったことがないブランドの商品を身近で触れることができた」「知らなかったブランドだけどとてもいい商品で購入した」といった反応があり、一定の成果が見られた。また、アロマやネイルは、サンプルを展示し、EC経由での購入となった。今後は、受け取りができるようにすることも検討したいとしている。

デジタルで来館者に働きかけ

 3Dホログラムを使い、都心ビルに入居する飲食テナントを支援する動きもある。東京建物は、4月5~30日まで大手町タワー(東京都千代田区)で、3Dホログラムサイネージでの映像配信と人流データを使った実証実験を実施。裸眼で立体的に見える装置を使い、施設の全店舗の案内を斬新な映像で表示。同じ建物内にある飲食店舗エリアに誘導し、どの程度が流入したかをデータ化する。数値化することで、広告やPR効果を測定する。

 データの収集は、各所に設置したソフトバンクのWi-Fiアクセスポイントを使う。ソフトバンクユーザーの携帯と自動で連携し、属性情報を集計する。

 東京建物によると、実施1週間でサイネージの写真・動画撮影をする人が1日平均で449人、ツイッター投稿での再生回数が5万件に達している模様だという。

都市の新たな可能性

 森ビルとNTTドコモは、森ビルが管理・運営する商業施設「お台場ヴィーナスフォート」(東京都江東区)において、AR(拡張現実)クラウドデジタルツイン技術を活用した、リアル空間とデジタル情報を融合させる実証実験を、3月12日~14日に実施した。ウェアラブルデバイスやタブレットを通じて、現実世界の景観の中に浮かび上がる街の情報、周辺の交通機関の情報、マルチプレイ対応のゲームの提供、バーチャル広告やクーポンなどをリアルタイムに配信した。

 今回の実証実験では、ドコモが開発を進めるARクラウド技術に加え、ARクラウド用のコンテンツ作成を簡易化するための開発ツール(開発協力=(株)ホロラボ)を使い、現実空間のデジタルツインを構築。リアル空間とバーチャル空間を融合させることで、リアルな空間に新たな価値を加えることを狙った。

 実証実験を終えて、技術的な検証としては、電車の運行情報や体験者の来館日に合わせたデジタル広告などを、適切な位置やタイミングで表示することができたという。また、マルチプレイ対応のゲームについては、遅延もなくクオリティの高いゲーム体験を実現できた。

 体験者からは、「ヴィーナスフォートの空間に店舗情報やゲームなどが違和感なく融合されていて、リアルの場とデジタル情報が組み合わさることで、街に新たな付加価値が生まれると感じた」「施設店舗の情報や、ゲームのマルチプレイなど、街の情報提供手段やサービスが進化すると、街歩きがより便利に、より楽しくなると感じた」などの声が上がった。

 実証実験を受けて、森ビルは「今回の実証実験をはじめとして、デジタル情報を都市空間に取り入れることが一般化されると、都市の新たな可能性が開けるだろう」と評価した。また、NTTドコモも「AR技術を活用することで、ヴィーナスフォートの世界観を生かしつつ、より魅力的な空間にすることができたと同時に、今後の社会実装に向けて、多くの技術的知見も得られた」と言う。

 今後は、館内状況や商業店舗との連携を強め、館内や店舗のリアルタイムの情報を表示させるなど、更なるAR活用を検討している。

 商業施設の苦境は、コロナがもたらしたデジタル化の側面が強い。それであれば、その打開にデジタルを使うというのは一つの解であり、その上でリアル特有の価値を訴求することも可能になってくる。これからの商業施設は、デジタルと向き合うことを避けることはできない。