集中力が欠如してくると、単純作業を挟み〝クッション〟として、思考の機会を設けてきた。DX(デジタルトランスフォーメーション)の最新技術で単純作業を自動化すれば、その思考や創造性のある仕事の時間がつくりやすくなるという。
▼ただ逆に、効率化に過ぎて、仕事上の〝余白〟を失うと、気持ちの余裕もなくなりそう。頭の良い人は意外にも、勉強でよく〝脱線〟するらしい。読書して様々な事項に興味がわくから、つい、横道にそれて色々と調べてしまう。結果的に全体を〝地図〟みたく俯瞰(ふかん)できる広い視野が養われる。応用力が付く。
▼本日付本紙のインタビュー(8面参照)で、「ポータブルスキル」を持つ人材の育成を意識している、との話を聞いた。どのような環境でも、(持ち運び可能な)実用性のある能力。先行き不透明な経済状況に、そうした人材育成が大切になる。一方、企業を弱体化させ、本人たちにとって、悲劇的で残酷な人材「非」育成の話も。
▼ある企業で部門長も務めていたような人たちが、それぞれの転職先では、叱責される日々だという。教わっていない、分からないと、すぐに人に頼る。まずは自身で考えてみる力や習慣が養われていないからだそう。自立・自律なく他力本願で試行錯誤もない〝思考停止〟では今後、AI(人工知能)に仕事を奪われかねない。その〝機械〟でさえも、ディープラーニング(深層学習)するのだから。