やがてやってくる未来
いよいよこの連載も本稿が最後の寄稿となりました。第3回では、「スマートホームの未来」について僭越ながら書かせていただこうかと思っています。
私たちアクセルラボが「SpaceCore」というプラットフォームをリリースしてから2年ほど経ちました。この2年間の中で、徐々にではありますが「スマートホーム」の認知度が高まってきていることを感じています。先日Amazonで年に一度のセールがありましたが、そこでスマートホーム特集が組まれていました。すでに、住宅をスマート化するという選択肢が、人々にとって家を魅力的な空間に変える手段として受け入れられていることの証左かもしれません。
統一規格の出現
そんなスマートホームは、これからどのような変化を遂げていくでしょうか。まず、一番初めにやってくるのがスマートホームの「通信規格の統一化」ではないかと考えています。スマートホームはインターネットがなければ動きませんが、個別のデバイス同士は独自規格の電波でお互いに通信しています。Z -waveやZigBee、Allseenと呼ばれる通信規格が存在しており、同じ規格同士のデバイスであれば、比較的スムーズに連携することができています。これが今後、1つの大きな規格に統合される動きが進んでおり、AmazonやAppleを中心に「Matter」という統一規格を創ろうというムーブメントが起こっています。
まさに今のSpaceCoreが実現している、多種多様な他社デバイスとの連携が、業界全体のスタンダードになろうとしています。
巨大プラットフォーム誕生
また、規格が統一されることで、プラットフォーム同士がつながり、1つの巨大なプラットフォームが生み出される可能性も出てきます。それにより、スマートホーム以外のサービスとの連携も大きく進展していくだろうと考えています。
最近よく、宅配業者とスマートロックメーカーが協力して、マンションのエントランスをシームレスに通過して置き配を行うという実証実験に取り組んでいます。
なぜこのようなサービスは簡単に実現できず、実証実験というステップを踏む必要があるのでしょうか。その理由の1つとして、それぞれのエントランス(鍵)のシステムの独自性が高く、宅配業者側のシステムとの連携に工数を要することが挙げられます。
ここに共通の規格とプラットフォームがあれば、宅配業者は、その通信規格と接続できるシステムを1つ作るだけで、あらゆるエントランス(鍵)と連携できるようになります。そうなれば、スマートロックと連動したエントランスを持つあらゆる住宅が、このように便利なサービスの恩恵を受けることができます。
ビッグデータとAIが
あらゆるデバイスやサービスが共通の規格の上で繋がることは、それらに関する多くのデータが蓄積され、巨大なデータの塊(ビッグデータ)を生み出すことにつながります。ビックデータを機械学習することによって、スマートホームに特化したAIができます。それによって、時間や季節、天候や行動に合わせて、スマートホームAIが家のデバイスを自動的に動かしてくれるでしょう。自分が何もしなくても家が勝手に動くことになるのです(図参照)。
それが善か悪かという議論はさておき、SF映画のような家で暮らすことに私個人はとてもワクワクしています。1968年に公開されたスタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」という映画では、「HAL9000」というAIが宇宙船を制御しています。物語の都合上、このHAL9000は人間に対して反乱を起こしてしまいますが、私たちの家と暮らしをAIが支えてくれる時代の姿を想像させてくれます。
暮らしを次のフェーズへ。それが実現される瞬間を皆さんと一緒に迎えられる日を楽しみにしています。