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彼方の空 住宅評論家 本多信博 ◇15 幸せの証明 誰かのために、誰かと共に 自分自身に多様性を

積水ハウスは「『わが家』を世界一幸せな場所にする」をグローバルビジョンとしている。「そのためには、まず社員を幸せにしたい」(仲井嘉浩社長)という思いから育休制度を充実させている。同社男性社員の育休取得率は100%だ。では一般社会はどうか。同社が小学生以下の子どもをもつ20 代~50 代の男女9400人を対象に実態調査した「男性育休白書2021」によると男性の取得率は12.2%と1割強にとどまった。ただ、20代男性に限ると31.6%で約3人に1人が取得している。

 注目すべきは育休を取得した男性の72 %が家事・育児に「積極的に関与」し、81%が「幸せを感じる」と回答していることだ。そこから見えてくるものは何か。積水ハウスが9月14日にオンラインで開いた「男性育休フォーラム」には仲井社長のほか、育休を推奨している会社の代表として日本ユニシスの平岡昭良社長とサカタ製作所の坂田匠社長らが参加し議論を深めた。

 まず、積水ハウスの仲井社長は育休推進を目指すきっかけとなった体験をこう話した。「スウェーデンの首都ストックホルムのスマートシティを視察に行ったとき、公園でベビーカーを押しているのがすべて男性だったのに驚き、後で聞いてみると男性には3カ月の育休取得が法律で義務付けられているという。私は感動し、帰国してすぐにわが社でも実践できないかと検討を始めた」。

イノベーションに必須

 日本ユニシスの平岡社長はこう語る。「会社はイノベーションを起こしていかなければ成長できない。そのためには社員が多様な価値観をもつ必要がある。その点、子育ては会社の仕事とはまったく異なる。育休期間が長くなるほど地域とのつながりもでき、多様性を身に着けることできる。自分自身に多様性がなければ他の価値観をリスペクトすることができない」

 また、サカタ製作所の坂田匠社長は「育休を取得した男性は女性に対する理解が深まり、とてもいい顔になって戻ってくる。そしてまた子供をつくる(笑)。実際当社ではベビーブームになっている」。また同社長はこうも語る。「今は先行き不透明の時代といわれるが、ダイバーシティなどむしろやるべきことがはっきりしている時代だと思う。それならやるべきことは、さっさとやってしまったほうが企業として注目もされ、メリットが大きい」。

 また、フォーラムではこんなことも指摘された。それは、男性が育休を取ると称賛されるのに、女性は特に称賛されるわけではないという問題だ。つまり、女性が子を産み育てるのは当たり前で、それを手伝う男性は称賛に値するという思想がまだ残っていることの証明である。

 しかし、仲井社長がストックホルムの公園で感動したのは、夫婦が子育てを一緒に楽しんでいる姿であり、そこに人間の幸せの原点を見たからではないだろうか。

不動産女性塾が活躍

 日本ではまだまだ男性の特権意識が残っている。そうした中で子育てと仕事を両立させ頑張る女性経営者が不動産業界でも増えており、そのネットワーク化が進んでいる。例えば、不動産女性塾(北澤艶子塾長)が9月14日に開いた第4回オンラインサロンには全国から35名が参加し、情報交換を行った。そこで共通していたのは、コロナ禍だからこそ実践できたことが貴重な体験となり、会社を成長させる原動力にもなったという報告だ。

 沖縄のゆいハートコーポレーション社長で県宅建協会女性部会長の又吉悦子氏はこう語った。「定例会で『コロナ禍における生理の貧困』が議題となり、早速7月と9月に12市町村の小中学生の手に生理用ナプキンを渡した。これを機に今後も地域貢献をやっていくべきという気持ちが会員間に高まっている」。

 人間の幸せは結局、誰かの役に立つこと、そこにしかないという当たり前の認識が今ようやく、この国にも広まり始めている。