岸田政権が打ち出した新しい資本主義だが「成長と分配」――双方を並列させるから焦点がぼける。「分配なくして成長なし」と言えば分かりやすい。「成長なくして分配なし」では当たり前過ぎる。分配政策で「分厚い中間層」(かつての一億総中流)を構築するという。日本人なら誰も反対はしない。しかし所詮は所得階層の話。ワクワク感はない。
▼新しい資本主義というからには、心躍るものが欲しい。そこで、新政権と足並みを揃え、我が業界が「新しい不動産業」を標榜してみてはどうか。「倫理なくして発展なし」。職業倫理(コンプライアンス)を徹底させることで、国民の間に分厚い信頼を得る。そのための第一歩が、不動産営業に従事する者は誰もが取得しなければならない国家資格(試験は倫理問題中心)の創設である。
▼管理業の適正化に向けては賃貸不動産経営管理士という国家資格を粘り強く要望したように、不動産業全体の底上げのためには最もベーシックで国民から親しまれる新たな公的資格が必要だ。業界は自らそれを国に要望すべきときである。
▼従来の資本主義は人間の幸福にとっては手段に過ぎない「利益の最大化」を目的としてきた。新しい資本主義は最終目的である「幸福の最大化」に照準を合わせるべきである。住まいや働く場の創造を通じて人間の幸福に大きく関わる不動産業こそ、新しい資本主義の柱とならなければならない。