総合 売買仲介

~畑中学 取引実践ポイント~ 不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(5) 物件の変遷を追い全体像を把握へ「登記事項証明書の読み方」

 不動産取引には登記事項証明書(以下、登記事項)を読むことが欠かせない。不動産の権利や範囲、資産価値など全体像を把握できるからだ。

 登記事項は現在に至る登記の変遷が記載されている全部事項証明書で確認を行う。この変遷を追うことが重要で、記載事項が多いほど何らかの問題や課題を抱えている可能性が高い。たとえば住宅で頻繁に所有者が変わっているのであれば建物に瑕疵や住環境が悪いなどの何らかの手放す理由があるかもしれない。

 登記事項は上から順に表題部、甲区、乙区の3つの項目から成る。各々の読むべきポイントを見てみる。

 表題部は所在や面積などの「不動産の概要」が記載されている。土地は(1)地積(2)変遷(3)地目、この3点を読む。特に(2)変遷が重要で分筆や合筆時の原因およびその日付欄の分筆合筆前の他の地番を確認する。それらの登記事項や地積測量図を取得することで正確な地積や土地の周回長さが分かるようになる。

 建物は(1)床面積(2)構造(3)築年数、この3点。特に重要なのは(1)床面積。融資基準の面積を満たすか、また建築基準法の違反、未登記部分がないかを確認する。建築基準法の違反は建築確認通知書もしくは建築計画概要書と照らし合わせて階ごとの床面積や建築面積、総延べ床面積を確認する。登記上と大きく相違がなければ違反性は低い。また建ぺい率、容積率が法定内かを計算すると同時に、本来建築確認上ないはずの階がないかを見たい。木造2階建ての住宅で屋根裏収納にて建築確認許可を得ながら3階としているケースがある。その場合は違反建築だ。

 甲区は「権利関係」が記載されている。所有権行使を阻害する仮登記権者や差押権者の有無を確認するのは当然のこと(1)所有者の確認(2)不動産取得の日付と原因の確認をする。(2)は売却時の譲渡所得税等の税額と関係する。譲渡所得税は売却時に利益が出た場合に課税される税金だが、所有期間により税額は大きく変わる。所有期間が約5年超なら税率は約2割、5年未満なら約4割と倍違う。また、取得原因が売買なら売却価格から購入価格を引き利益を小さくできるが、原因が贈与や相続なら売却価格がほぼ利益になり税額が大きくなる可能性がある。

 乙区は担保力に比していくらまで融資を受けられるか「財務力」が記載されている。

ここでは(1)抵当権や根抵当権の有無と残高確認(2)融資を受けた理由、この2点を確認する。

 以上登記事項の読み方を簡単に述べた。しっかり読み込み、不動産を正しく把握していきたい。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動をして現在に至る。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。

 著書には約8万部のロングセラーとなった『動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストでは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。