市区町村役場で調査ができなかったその他の重要事項の調査を行う。主に(1)ガス(2)電力(3)擁壁(4)管理(マンション)の4点であり、該当する場合は各々へ調査をする。
ガスはA:都市ガスなら都市ガス会社へ問い合わせ、埋設管理図面を入手するとともに引き込みの有無と、埋設管の口径等を確認する。どこの都市ガス会社を利用しているかは売主へヒアリングをすれば分かるが、分からないなら日本ガス協会のHPでガス事業者検索(https://www.gas.or.jp/jigyosya/)で該当会社を絞り込んで問い合わせを行う。なお、ほとんどの会社はインターネットかファクスによる調査申込と回答を行っている。もし、引込管がないなら引込費用、前面道路に埋設管が来ていない場合で都市ガス整備予定なら整備予定時期と負担金等をヒアリングしておこう。
B:プロパンガスならプロパンガスに記載されているプロパンガス会社へ問い合わせを行い、契約条件等を確認する。ガス配管設備の所有権がプロパンガス会社にあるなら、使用料等の契約条件をヒアリングすることが必要となる。売主へのヒアリングも必須だ。
電力は売主に電力供給事業者名をヒアリングするとともに、A:高圧線が架設しているなら近隣の鉄塔に掲示されている鉄塔名(ナンバー)を伝え、建築への制限(離隔距離)と線下補償、電圧を確認していく。線下補償とは不動産の上部に高圧線を通すことへの金銭補償のことだ。土地の登記情報に地役権の設定があれば、ほぼ確実に線下補償をしているが、設定せずに線下補償をしていることもあるので、不動産の上部を見上げて高圧線があるように見えるなら迷わず問い合わせをしておきたい。
B:不動産内に電柱がある場合は、その土地使用料を確認する。3年契約で1本1500円/年ぐらいが相場だ。なお、ABともに売主から契約書等の書類を入手できれば一目瞭然だが、紛失していたり、失念してスルーされることがあるので注意する。
擁壁は対象不動産に接する他者所有の擁壁で、がけ条例で建築等の制限をかけないかを調査していく。
主にA:線路擁壁、B:水路擁壁の場合は各所で調査する。A:線路擁壁は電鉄会社に確認を取ることになるが、擁壁は鉄道法の基準でつくられており、建築基準法上の安全性の担保はされていないことに注意をしたい。何回か建築指導課と鉄道会社で確認するので時間がかかることを想定しておきたい。
B:水路擁壁は所有している自治体などの第三者機関へ調査していく。水路底から不動産の地盤面までの高さが2メートルを超える場合は建築に制限がかかるので注意しよう。
次回はマンション管理会社への調査について触れていく。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。