住宅ローンの本審査手続きを見届けたら、次の目標は停止条件と解除条件のクリアとなる。具体的には停止条件を成就するように、解除条件が発生しないようにコントロールしていくことだ。
停止条件は売買契約が成立するための条件のことだ。たとえば確定測量図や私道所有者における通行掘削承諾、借地権における土地所有者の承諾が取得できたら売買契約は成立するといった条件のことである。条件を充たしたときに法的効力が発生するので、それまでは売買契約自体が成立していない解釈となる。
一方で解除条件は売買契約が解除となる条件のことだ。たとえば住宅ローンの審査に落ちたら契約解除ができる条件(住宅ローン特約)、自宅売却の売買契約が締結できなかったら契約解除となる条件のことである。条件が発生したときに法的効力が消滅するので、それまで売買契約自体は成立していることになる。
ここまでは宅建の話で、次からは実務の話になる。
この停止条件と解除条件はともに契約不成立や解除とならないようにサポートし、コントロールしていくことが必要となる。必ず売主や買主などの売買当事者や、土地家屋調査士や測量士などの専門家(以下売主等)に任せておかないことだ。
「私に任せてもらっても大丈夫ですよ」と言われても、やんわりと「スケジュールもありますので、確認の意味で連絡しても良いですか」「何かスムーズに行かなければ私を使ってくださいね」と伝えて(1)進ちょく状況の確認や、(2)助言、(3)書類作成や手続きの代行などを行っていく。特に第三者の承諾が必要なものは(1)自身で行うか、(2)売主等と一緒に行う、という気持ちを持っておこう。売主等に任せておき、条件期限間近になってどうなっているかと連絡をしたら、売主等から「いや、私道所有者から忙しいのでまた今度来てくれと言われて退去したら、次回のアポイントがなかなか取れずに困っているんです」と言われ慌てるのが関の山だからだ。それなら自分で事前にあいさつ文と承諾等の書面を送っておき、間を空けてから訪問し承諾を得るのか、売主等と一緒にあいさつに行き、承諾書等の説明をして、次回のアポイントメントを取ったほうが効率は良い。
筆者が第三者の承諾を取得する場合は、自分で第三者宅へ足を運びあいさつを行いその場でか、次回のアポイントメントを取った上で訪問し承諾書を取得している。このほうがスケジュールは読めるので安心だ。必ず期限内に停止条件の成就や解除条件の不履行にしておきたい。
悔いのない売買仲介を行うために売主等以上に当事者意識をもって取り込んでいきたい。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。