総合 売買仲介

不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(34) ~畑中学 取引実践ポイント~ 不測の事態を踏まえて行動を 「金銭消費貸借契約は同行する」

 金銭消費貸借契約とは住宅ローンを借りる契約のこと。略して金消契約(きんしょうけいやく)と言う。

 買主と金融機関との間の契約なので、任せて立ち会わずとも良いと考えがちだが、その日に契約手続きを完了しないと残代金決済・引き渡しのスケジュールに影響が出る可能性がある。

 特に売主側に抵当権の抹消がある場合、残代金決済・引き渡し日を延期するのは容易ではなく、また手続きを最初からやり直す羽目になるので残代金決済日は相当先になってしまう。

 場合によってはトラブルに発展することも考えられるので、その日で金消契約を完了させることを目的に、(1)「融資商品の内容のフォロー」、(2)「手続きのサポート」、(3)「何かトラブルが発生した場合の対応をするために、自身も買主に同行する」のが最善だろう。

 また、同行することで買主に安心感をもってもらいスムーズに契約手続きを完了できるかもしれない。

 (1)融資商品の内容のフォローは結構重要だ。事前に買主に融資商品の内容を伝えていても、金利や期間、変動固定などの重要ポイント以外の細かな点は見過ごしていたり、忘れてしまう方が多い。そのため、金消契約時に融資条件を書面で説明されると「えっ・・こんな内容だとは知らなかった」と話が止まってしまうこともある。その時に「前に説明した費用がこれで」など過去に説明した資料を見せつつ、買主の納得と理解を得つつ前に進めていきたい。

 (2)手続きのサポートもそうだ。金種(振り込みや現金出金)や融資額の振込先などを間違いないようにサポートしていく。

 何かトラブルが発生した場合は代わりに動いたり、対処していこう。よくあるのが必要書類の持参し忘れ。そのため、委任状は必ず持参し、買主の代わりに取得してくることも想定しておこう。事前に必要書類を買主とチェックし合っていれば起きにくいのだが、その時間が取れないこともある。

 また、納税証明書など普段聞き慣れない必要書類は勘違いを起こしやすい。固定資産税等の納税証明書が必要なのに住民税の納税証明書を持参されてきたこともある。

 他にも、その日で金消契約が完了しないなら、今後どのような流れで進めていくべきか買主と金融機関と相談をしておきたい。このように何かと同行した方が最善と言えるだろう。

 金消契約は金融機関によって土・日も対応しているが、一般的には平日の手続きを求められることが多い。また残代金決済・引き渡し日まで中2営業日以上を空ける必要が多い。買主の予定を確認しつつ日程を決めていこう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。