改正空家対策特措法が昨年12月13日に施行された。今回の特徴は、「活用拡大」、「管理の確保」、「特定空家の除却等」の3本柱のうち、周囲に悪影響を及ぼす前の「有効活用」や「適切な管理」を強化する方向性が示されている。空き家の利活用や、空き家の劣化を防ぐための管理しやすくするための制度改正などが盛り込まれている。
空き家問題は、除却よりも利活用や管理適正化に関心が集まりがちだ。だが、空き家問題が発生するのは、大きな視点から見れば少子高齢化だ。少子高齢化の中で、利活用や管理適正化を上手くいくようにするには、空き家が多すぎるが、利活用や管理と比べると、コストが掛かる空き家の除却はハードルが高い。除却を避けるために、利活用や適正管理を注力するのは正しい方向性だろう。
空き家の問題は、都市部と地方部で異なる。都市部では、人口増加時期に受け皿となった大都市近郊の住宅は、都心回帰の流れで人口が減少する、いわゆる「オールドタウン」の問題が浮上した。
地方では人口増加期に転出した子供や孫世代が戻らず、都会に生活の基盤がある子供や孫世代が住宅を相続した時に放置され、老朽化が進んで問題空き家となる。売却価値がないケースも多く、売却価値がある土地でも、相続時の管理関係の整理ができずに売却ができないという問題もある。空き家の利活用や適正管理は、こうした事情を解きほぐしながら手掛ける必要がある。
空き家の利活用や適正管理と比較すると、除却は空き家問題において共通する課題だ。除却が必要なケースは、更地にして新たな利用を図る場合と、危険性が高い迷惑空き家を排除する場合がある。後者は早急な除却が求められるが、除却を行えるのは現状では所有者か行政による代執行の2つしか選択肢がない。もし、第三の主体による除却が可能であれば除却を進める一助となるだろう。
第三の主体として期待できるのは民間企業やNPOなどの組織だ。特に民間企業は、独自のノウハウやアイデアを駆使してビジネスとすることで、除却を持続可能な仕組みにすることができる。もちろん民間企業が除却に関わるためには、地域住民に安心して利用してもらえるよう地方自治体との連携が不可欠となるだろう。
除却した跡地は、利活用もさることながら、少子高齢化においては、地球温暖化対策の観点から緑に戻すという選択肢もあるだろう。緑に戻す土地が増えることで、それらをまとめて緑地の二酸化炭素吸収量を証券化して、企業に売却することで除却資金や緑の管理資金を捻出するといったことが可能になるかもしれない。第三の主体として民間企業が関わることで、空き家の除却が新たな不動産ビジネスとして成長する可能性を秘めていることを指摘したい。