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大言小語 コスト上昇への〝銀の弾丸〟

 マンション価格の高騰が続いている。不動産経済研究所によると、23年の首都圏新築分譲マンション価格は戸当たり平均で8101万円。東京23区に至っては、初めて1億円を突破したそうだ。周知の話ながら、まさにうなぎ上りといった様相を示している。

 ▼こうした話題において、業界内からは「土地代に加えて、資材価格や人件費など建築費の上昇が著しいため仕方がなく、こちらも辛い」といった声をよく聞く。他方、一般層の一部では「高すぎて手が届かない、庶民に家を売る気がないのか」等の論調も見受けられる。どちらも一面では正しく、同時に偏りの大きな意見のように思う。

 ▼個人も企業も、予算の限界を超えるものは当然、購入の対象外。理由がどうであれ、またいかに付加価値が高くともそれは大前提だ。だからこそ、その購入予算の大きな富裕層や海外顧客に焦点を当てた事業戦略が近年のトレンドとなっているのだが、国家の将来をマクロで見た場合、その方向へ行き過ぎるのは到底望ましくないだろう。

 ▼つまるところ、一般層の所得向上こそがコスト上昇に対する〝銀の弾丸〟であり、SF風に言えば「たったひとつの冴えたやりかた」なのだろう。昨年の賃上げは、大手企業こそある程度伸びたものの、全体の実質賃金はマイナスが続く。内需の比重の高い住宅業界にこそ、先人にならい「隗より始めよ」の意識を持って欲しいと願う。