借地権付き建物の取引は所有権である場合と比べて3つの異なるポイントがある。1つ目は「土地所有者の承諾が必要であること」、2つ目は「ローンに制限があること」、3つ目は「借地説明書を作成すること」、この3点だ。
まず1点目。引き渡し時までには必ず土地所有者の承諾を書面でいただく必要がある。書面の形式は申込人である借地権者の住所氏名、対象地番や面積、地代などの借地権の概要、譲渡する相手の住所氏名、譲渡承諾料(後述)、それについて承諾する旨の土地所有者の住所氏名が明記される。この承諾がないと賃貸借契約の違反になるので注意しよう。
同時に取引が決まったらすぐ借地権者を通じて土地所有者に承諾の条件を確認する。その際に問題になりやすいのが譲渡承諾料。借地権価格か所有権価格(時価)の5~10%を明示されることが多いが、それなりの価格になるので借地権者が「えっ、高い」と躊躇(ちゅうちょ)することがある。場合によっては「土地所有者と交渉をして安くしてもらう……」となることもある。時間を要するので、その分スケジュールの余裕は見ておきたい。借地権者と土地所有者の間で交わされている土地賃貸借契約書に譲渡承諾料の計算方法が明記されている場合は、事前に計算をしておき、借地権者に確認しておくとスムーズかもしれない。
2つ目はローンの制限。まず大きな点は買主がローンを組む場合は多くの金融機関から「抵当権設定承諾書」を求められる。抵当権設定承諾書は簡単にいうと、土地所有者に建物(土地ではなく)に抵当権の設定をすることを認めてね、という書面だが、付帯条件が付くこともある。付帯条件はたとえば借地権者が地代を3カ月滞納したら金融機関に連絡してほしいなどだ。土地所有者の中には義務ではなく、面倒くさいので書面にサインしない、もしくは付帯条件の内容が認められないということで承諾を拒否する方もいる。
抵当権設定承諾については、慎重に話を進めた方が良いだろう。また、居住用ではあまり所有権の場合と差がないが、非居住用だと土地の所有権がない分、担保力の観点から融資額が伸びにくい。投資物件だと自己資金で半分以上はご用意ください、と言われることも多い。事前に金融機関にどの程度融資が出るか打診をした上で販売や買主に説明をしていった方が良いだろう。
3つ目の借地説明書は準備や作成をし忘れやすい。重要事項説明時に借地権の概要を説明するもので、A4で1枚程度の書面だ。筆者もよく「売買契約の準備が終わった~」と一息ついた後に「そういえば借地説明書を作成してなかった……」と直前に気づき慌てて作成するということがある。見落としがちな書面なので注意したい。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。