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不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(67) ~畑中学 取引実践ポイント~ トラブルになりにくい手続き「借地付き建物の取引(2)」

 今回は借地権付き建物の取引においてトラブルになりにくい手続き方法について触れていく。ポイントは「土地所有者(底地権者)と借地権者の譲渡承諾条件をできるだけ早く双方の同意を得ておく」ことだ。

 前回も述べたが、借地権付き建物の売却には土地所有者の承諾(譲渡承諾)が必要となる。ただし、承諾には原則、承諾料が必要であり、他にも新しい借地権者から地代を増額したいとか、譲渡先はこういう方は同意できないなど土地所有者から条件が出てくることがある。かなり面倒だ。そのため、事前に土地所有者から条件等を聞き出しておかないと私たちも重要事項説明書や借地説明書の記載ができない。かつ検討客にも案内や説明ができない。売買契約前に説明をして「その条件だったら買わない」と言われたり、借地権者からも「その承諾料だと手元に残る金額が少なくなるので売りたくない」となることもある。心臓に悪い。

 所有権の不動産売買とは異なり、取引成立には売主と買主以外にもう1人キーパーソンである土地所有者がおり、納得と同意を得るのにブラス1の労力が必要だ。その労力を早めにかけて、できるだけ早めの譲渡承諾条件の同意を得ておこう。反対に土地所有者の譲渡承諾条件の確認と借地権者の同意を得ることが遅ければ遅いほどトラブルにつながりやすいことは覚悟しておき、取引を進めていく。具体的には、(1)土地所有者が承諾料を含めどのような譲渡承諾条件なのか、(2)借地権者はその譲渡承諾条件に同意ができるのか、(3)検討客(買主)に重要事項説明書や借地説明書で具体的に説明できる内容を確認したのか、これら3点を借地権者からの売却の媒介前に、遅くとも販売活動前には確認等を終えておきたい。

 「いや、買主も決まらないのに土地所有者に聞いても無駄でしょう」と余裕をこいて売買契約前の確認だと前述のとおり涙を見る可能性が高くなる。気をつけたい。

 なお、土地所有者への確認の際には譲渡承諾料や条件の他にも、(1)土地所有者が借地権を買い取ることはないのか、(2)更新料や建て替え承諾料など各種承諾料はいくらか、(3)前記(2)の計算根拠は何なのか、(4)譲渡承諾で新規契約の期間は何年(20~30年)となるか、(5)土地(底地)を売却する予定はあるのか、この辺りも聞けるなら聞いておこう。買主からも尋ねられる可能性があり、それが購入確認に必須ということもある。

 筆者もつい先日、借地権者側の不動産会社と購入に向けて売買の話を進めていたが、結果は「土地所有者が承諾を拒否(=借地権を買い取る)」となり、それまでの労力はパーになった。しっかりと売却準備はしておかないと、各方面に迷惑をかけることは肝に銘じておこう。

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。