総合

不動産ビジネス塾 売買仲介 初級編(70) ~畑中学 取引実践ポイント~ 所得税等申告で売主から質問 「売買代金の内訳の計算」

 「売買契約書に建物と土地の内訳の価格が書かれていません。申告に必要ですがどうしたら良いでしょうか?」この質問に回答ができるよう担当者として内訳を計算できるようにしておきたい。

   ◎  ◎  ◎

 売買契約書における売買価格は売主、買主とも個人(非事業者)の場合は建物、土地、消費税等の内訳を明示せず総額表示となるケースが多い。しかし、売主は売買の翌年譲渡所得税等の申告を行うのが一般的であるため、総額表示しか記載されていないと冒頭の質問となることが多い。そのため建物価格と土地価格、消費税など売買代金の内訳を計算できるようにしておく方が顧客サービス上良いだろう。

 「税理士か税務署に聞いて欲しい」と言いたいところだが、売買価格の内訳は売買当事者の合意事項なので、「こちらで計算しても良いが、本当は不動産会社の仕事でしょう」というのが税理士や税務署の本音だ。そのため、できれば売買契約書に盛り込むこと、もしくは皆さんで計算をして明示した方が良い。

 筆者も例年12月から2月にかけてお客様からこのような相談が多かった。売買契約書に明記されない(できない)場合は、売主に事前に売買価格の内訳を計算して渡しておくようになった。

 内訳の計算方法は国税庁のホームページに3つの方法が記載されている。

 (1)譲渡時における土地及び建物のそれぞれの時価の比率による按分(あんぶん)

 (2)相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分

 (3)土地、建物の原価(取得費、造成費、一般管理費・販売費、支払利子等を含む)を基にした按分

 このうち私たちにとって計算が容易で、かつ、お客様にとっても分かりやすいのが(2)の固定資産税評価額によって按分する計算方法だ。 

 手元に固定資産税等の課税明細書もしくは評価証明書を用意する。そして、売買価格×土地の評価額(建物の評価額+土地の評価額)をすれば土地の価格となる。

 反対に売買価格×建物の評価額(建物の評価額+土地の評価額)とすれば建物価格となる。基本的にはこの方法でOKだ。

 他の2つの方法でも構わないとされるので、土地の価格が高いエリアは(1)を、建てる際に建物に費用が掛かっている場合は(3)を選択して計算しても良い。

 なお、売主が課税事業者で消費税がある場合は、建物価格に10%を乗じて消費税額を算出し、土地価格と調整をしておこう。土地価格には消費税はかからない。消費税がある場合は主に(3)の計算方法となるが、売主やその顧問税理士と相談をして決めていった方が良いだろう。        □  ■  □

【プロフィール】

 はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株)代表取締役。

 2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。