4月、東京都のカスタマーハラスメント防止条例が施行された。暴言、威嚇、強要など、行き過ぎた顧客の声は、SNSを使った匿名の力でエスカレートする。これに対し、住宅・不動産業界各社も対策方針を打ち出している。「働く場、従業員を守る。そして、毅然とした態度でサービス提供を断ることもある」。事業者側の明確な意思表示となる。
▼「お客様」は本来、事業継続に不可欠なキーパーソンだ。しかし、「神様」と崇めてばかりもいられない。度を越した理不尽な要求には断固ノーと言うべきだろう。安全な就業環境を確保しなければ人材獲得は難しい。人材流出の要因ともなれば、事業が立ち行かなくなる。一方、方針を掲げる事業者側にも更なるサービス向上の姿勢が求められる。そもそも顧客をいらだたせる落ち度はなかったのだろうか。
▼住まいという高額商品に寄せられる期待は大きい。そう心得て、顧客対応の研さんを積まなければならない。〝まともな抗議〟を見抜けない鈍感さや顧客の声を無視する態度は致命的となる。抗議は顧客にとってもエネルギーを要するのだから、聞く耳や改善見込みのない事業者に付き合う義理はない。くみ取る力がなければ、優良客も離れていく。だが、事業者は社内外に打ち出した対策方針を「社員教育と社員の成長」の好機として捉えたい。負担感の大きさがよぎるだろうが、対策達成による成果は確実なものとなる。