業界内外が注目した賃貸住宅の更新料の是非を問う裁判で、最高裁が出した結論は「有効」だった。更新料を最高裁が追認したことで、賃貸住宅市場で高まっていた緊張感も収束に向かうことになる。今回の判決で意義があったのは2点だ。1つは更新料という金銭の位置付けが明確になったこと。もう1つは貸手と借手が合意した契約内容についてそれぞれが義務を負うという賃貸借契約の厳格化が進むことだ。
■誤認や不信なくす
これまでの訴訟や一時金をめぐるトラブルでは、更新料が何の対価なのかという議論が絶えなかった。今回、初めて更新料が「賃料の補充ないし前払い、賃貸借契約を継続する対価などの趣旨を含む複合的な性質を有するもの」と明確に示されたことで、今後、契約当事者間の誤認や不信をなくすことにつながる。
また、特に争点になったのが消費者契約法10条「消費者の利益を一方的に害する」かどうか。これについても、「契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、その額が賃料、更新期間に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り違反には当たらない」との見解が示された。消費者保護の流れは当然だが、同時に消費者義務もまた存在していることを改めて認識させた判断として意義深い。
■変わらない借手市場
今後の賃貸市場はどうなるのか。巷では、更新料がお墨付きを与えられたとして、新たに条項を加えたり、値上げの動きを懸念する声が上がっている。反対に、借手市場にあることを理由に有効判決が更新料存続に必ずしも直結することにはならないとの見方もある。長期的には、徐々に更新料はなくなっていくと見る、実務を踏まえた業界内の意見も多い。
日本賃貸住宅管理協会が昨年から取り組み始めた賃料と一時金の総額から実質賃料を算出する「めやす賃料表示」制度も、そうした業界の自主的な流れのひとつとみることができる。
賛否両論入り交じる更新料の行方は市場に委ねることになるが、依然として残る問題がある。それは、有効判決が示されたとはいうものの、更新料を賃料の一部だと借手が納得した上で今後も受け入れるのかという根本的な問題だ。消費者が納得しえないものは、たとえ法が認めたとしても長続きしないことは明白だ。
それらを踏まえると、貸手、借手間の条件交渉が今後より厳しくなると予想される。そのため仲介業者にもより中立的で倫理観の高い役割が求められることになるだろう。
有効判決を持って全て良しとするのでなく、信義則に基づいて契約を履行できるように、両者の合意とりまとめに細心の注意を払い、説明義務を果たすことが何よりの解決方法になる。