日本国に初の女性首相が誕生。自由民主党総裁の高市早苗氏が21日に招集された臨時国会で第104代内閣総理大臣に選出された。高市首相は緩和的な金融政策と財政拡張を選好していることで知られ、今後の日銀の利上げ路線に影響を与えるとの観測も浮上している。政策金利は9月に5会合連続で0.5%程度に据え置いた。こうした緩和的な姿勢が続くことは、住宅・不動産業界にとっては内心ホッとしているのが本音であろう。とはいえ、前回会合で政策金利の据え置きに2人の審議委員が反対票を投じ、今月16日と20日にもそれぞれ「利上げを判断すべき局面にきている」との発言が伝わっており、次回の金融決定会合も利上げを主張するとみられる。まずは10月29、30日の金融政策決定会合が注目されるところだ。
住宅・不動産業界に目を転じれば、先の参議院選挙で外国人問題が急浮上し、日本政府や一部の自治体から投機目的の不動産取引を制限すべきだとの声が上がり始めた。外国人をやり玉に上げ、居住実態のない外国人取引について、自民党や日本維新の会、国民民主党、参政党などは厳格・毅然とした方針で臨む姿勢を示している。
東京都千代田区は、不動産協会に対して購入後に5年間の転売禁止や同一建物で同一名義による複数戸の購入禁止などを要請した。東京にとどまらず、神戸市は今年5月にタワーマンションの空き部屋の所有者に法定外税の可能性を検討する第1回会合を開催し、昨年6月には京都府議会が外国人などの土地取得・利用を制限する法整備を求める意見書を衆参両院議長と内閣総理大臣などに提出。外国人などの取引規制は、千代田区の転売禁止要請に端を発したように見えるが、実は昨年からじわりと包囲網が敷かれ始めている。
このように規制策としては、転売規制や空室税の導入などが挙げられている。バブル期には取得から2年以内に不動産を売却した場合に短期譲渡所得課税(約39%)に20%の加算税が適用された例はあるが、私有財産権にも及ぶ話であるだけに転売規制に実効性を持たせるのは容易ではない。そもそも所有期間5年以下にかかる短期譲渡所得課税があり、一般的に5年間は保有し続けるとみられ、5年間の売却禁止が価格高騰の歯止めになるとの見方は軽々であろう。今春の大型連休で発売された「ブリリア二番町」は投資目的では買えない制限付きでも即日完売した。築50年の建て替えプロジェクトで、自身もしくはその親族の居住目的で購入することが条件だった。これは仮に転売規制を敷いても価格を抑制する担保にはならない証左である。価格を下げたいのならば市場の原理をゆがめる総量規制、融資規制といった強力な抑制策を講じなければ難しい。新首相には不動産の価格形成は循環的な景気変動によって決まるという原理原則を無視しない慎重さを求めたい。




