株式市場・証券相場の用語に、「アノマリー」というものがある。直訳すれば「例外」「異常」といった意味だが、証券分野では「論理的根拠はないが、高確率で発生する現象またはその経験則」を指す。代表的なものには、1月はリターンが高くなりやすいという「1月効果」や、「辰巳(たつみ)天井」といった「十二支のアノマリー」などがある。合理的説明のつかない人間心理の産物と説明されることもあり、調べてみると面白い。
▼最近は急に冷え込み、つい1カ月ほど前とは食生活が一変した人も多いだろう。食品小売業のデータ調査(気象庁分析など)では、「気温が18度を下回るとおでん、25度を上回るとアイスクリームの販売が急増する」という。これも、特定の気温が境となる論理的な因果関係は明確ではないが、経験則としてうなずける「アノマリー」と言えよう。不動産業界でも、例えば「普請をすると寿命が3年縮まる」などはアノマリー的かも知れない。
▼景気との関連では、「不景気にはアイドルの人気が高まる」といった経験則的な現象も指摘される。この辺りは微笑ましいものの、「景気が悪くなるとナショナリズムや排外主義が台頭する」という事実も歴史的・世界的に見られる。人間心理として説明はつけやすいが、避けようのない普遍的な法則でもあるまい。相場も政治も、不穏なときこそ経験則を超えるような冷静な対応が望ましい。




