年金不安・相続税改正に対応 資産として再発見! マイホーム活用術

資産として再発見!マイホーム活用術(9) Q8.賃貸した自宅を売却する際の問題

・貸家を入居者つきで売却すると、空家より安くなることも
・入居者に立退きを求める場合の交渉が難しい
・入居者の立退き費用は譲渡費用になる
・引越しから3年目の年末を経過してから売却すると不利

売却価格の問題点

入居者つきのまま、貸家にしたマイホームを売却するとき、投資用不動産と同じように売却価格の査定が行われます。具体的には、年間の家賃から経費を引いた利益が、適正な利回りで得られたものとした場合、物件本体の元本価格はいくらになるか、という考え方で求められた「収益還元価格」で金額が査定されます。買い手となる投資家は相応の利回りを期待して、購入金額を決めるからです。 

この価格は、ともすれば空家状態の住宅を売る場合の査定価格よりも安い価格になることが少なくありません。

住んでいる家を貸さずに売った方が、売買金額が高いということが起こるのです。

立退きなどの問題点

このため、貸家を売る場合、入居者に立退きを求めてから売却することが行われます。もちろん、家主の都合による入居者の立退きに際しては、立退き費用の負担が避けられません。この金額は、入居者との交渉により決めるほかはなく、交渉が長引いたり、決裂したりすれば、売り時を失う恐れもあります。交渉がもつれた場合には、弁護士などの専門家に話をまとめてもらう必要も出てきます。当然、弁護士費用などもの負担も余儀なくされるでしょう。

なお、立退き費用は不動産を売却した場合の譲渡所得の計算上、譲渡費用となり売却益から差し引くことになります。ですが、住んでいる家をそのまま売るより、手取り金額が減少することは間違いないでしょう。

譲渡税の問題点

マイホームは、所有者が住まなくなってから3年目の年末の経過後に売却すると、譲渡税の特例である「3,000万円特別控除」をはじめ、「特定居住用財産の買換え特例(マイホーム買換特例)」など、居住用の不動産を売った場合の特例が利用できなくなります。

このため、契約上立退き問題が起こらないようにするとともに、居住用の不動産を売った場合の譲渡税の特例が利用できるように借家契約を2年から3年の「定期借家契約」で締結するなど工夫する人もいます。

税理士 本郷 尚 (ほんごう たかし) http://www.tactnet.com/

税理士法人タクトコンサルティング 代表社員
株式会社タクトコンサルティング  会長

昭和48年 税理士登録
昭和50年 本郷会計事務所開業
昭和58年 株式会社タクトコンサルティング設立
平成15年 税理士法人タクトコンサルティング設立
平成24年  株式会社タクトコンサルティング 代表取締役を退任し、会長に就任

不動産活用・相続・贈与・譲渡など資産税に特化したコンサルティングを展開。
資産税を軸足とした税理士として、執筆、講演に注力。


【主な著書】
「継ぐ」より「分ける」相続―45歳を過ぎたら“相続適齢期”(タクトコンサルティング)
心をつかめ!コンサルタント(住宅新報社)
ほんもののコンサルタントになる本―プロは勝ちより価値にこだわる (能力開発シリーズ)(住宅新報社)
がんばれ大家さん!(タクトコンサルティング)
生前相続―発想を変えれば人生が変わる(文芸社)
女の相続―Six stories(文芸社)
改訂とっておきの相続(タクトコンサルティング)
不動産M&A入門 (図解不動産業)(住宅新報社)