年金不安・相続税改正に対応 資産として再発見! マイホーム活用術

資産として再発見!マイホーム活用術(16)Q15.高収入なら含み損のある住宅売却でお得に

・保有期間5年超の自宅なら、譲渡損を他の所得でカバーできる
・買換え型と売切型の2種類の制度を使い分ける
・合計所得金額が3,000万円以下の人が対象

マイホームを買換える際、譲渡損失が発生した場合、その損失をその年の給与など、その他の所得と損益通算をして、それでも引ききれない赤字の金額を翌年以降3年間の所得から差し引く「居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例」という制度が利用できます。ただし、合計所得金額が3,000万円を超える年分については、繰越控除の適用は受けられません。連動して住民税での損益通算・繰越控除もできます。
売却する住宅の要件は次の通りです。

①譲渡する人の居住用の住宅
②所有期間が譲渡年の1月1日で5年を超えること
③平成25年12月31日までの譲渡であること
④土地の譲渡は500㎡までの部分に限る

一方、買換え先の住宅等に関する条件は次の通りです。

① 譲渡年の1月1日又はその前年からの譲渡の翌年の12月31 日までに借入れ(住宅ローン)により取得
②取得年の翌年12月31 日までに居住
③床面積50㎡以上
④繰越控除を受ける年末に所定の住宅ローンの残高がある
⑤借入先は親族以外の所定の金融機関等

ご質問のケースで仮に住宅を売却したとして譲渡損が4,000万円出たとすれば、給与所得1,500万円の方なら、譲渡の年とその翌年は所得税・住民税は0になり、3年目は500万円の所得に対する所得税・住民税を負担すればよいことになります。

  譲渡の年 翌年 翌々年
損失 4,000万円 2,500万円 1,000万円
給与所得 1,500万円 1,500万円 1,500万円
通算・繰越控除後の所得 0 0 500万円


また買換えしない場合でも、住宅の譲渡損の損益通算・繰越控除を認める制度もあります。売却する住宅の主な要件は、①住宅は保有期間が5年を超えるもの、②譲渡の前日に譲渡した住宅にかかる一定の住宅ローンの残高があること等です。人の要件は上記特例と同じです。

ただし、住宅ローンの残高が住宅の売却金額を上回る部分が損益通算・繰越控除の対象となりますので、節税効果は買換え型よりは薄いといえるでしょう。

税理士 本郷 尚 (ほんごう たかし) http://www.tactnet.com/

税理士法人タクトコンサルティング 代表社員
株式会社タクトコンサルティング  会長

昭和48年 税理士登録
昭和50年 本郷会計事務所開業
昭和58年 株式会社タクトコンサルティング設立
平成15年 税理士法人タクトコンサルティング設立
平成24年  株式会社タクトコンサルティング 代表取締役を退任し、会長に就任

不動産活用・相続・贈与・譲渡など資産税に特化したコンサルティングを展開。
資産税を軸足とした税理士として、執筆、講演に注力。


【主な著書】
「継ぐ」より「分ける」相続―45歳を過ぎたら“相続適齢期”(タクトコンサルティング)
心をつかめ!コンサルタント(住宅新報社)
ほんもののコンサルタントになる本―プロは勝ちより価値にこだわる (能力開発シリーズ)(住宅新報社)
がんばれ大家さん!(タクトコンサルティング)
生前相続―発想を変えれば人生が変わる(文芸社)
女の相続―Six stories(文芸社)
改訂とっておきの相続(タクトコンサルティング)
不動産M&A入門 (図解不動産業)(住宅新報社)