首都圏マンション市場は10年堅調
住宅新報5月14日号・11面に、首都圏マンション市場の将来予測に関する記事〝今後15年は戸数維持も需要構造変化に対応を〟を掲載しています。マンション市場の分析やマンション事業のコンサルなどを行っているトータルブレインに、取材させていただいたレポートをまとめたものです。
この記事を要約すれば、人口減少や高齢化などを背景に、住宅マーケットの縮小が指摘されているけれど、こと首都圏に限って人口動態をみると、今後10~15年、世帯数は減少しないし、人口減少も緩やか。年間5万戸前後(なお、12年の供給戸数は、住宅新報13年1月19日号〝12年首都圏マンション供給 前年比2.5%増の4.5万戸〟)が適正ボリュームとして供給されていくのではないか。ただし、世帯数維持の背景には単身世帯の増加が大きく影響しているので、商品を考える上で、そうした単身世帯向け(もちろん高齢者向けも)の企画が重要ということです。
中古流通促進策の影響は
このレポートを取材させていただいたとき、1つ頭に浮かんだことがありました。それは、人口動態変化のほかに、中古流通市場の動向が影響しないのかということです。
レポートでは、その点にも触れています。結論から言うと、「マンション検討客は、新築希望が主流。新築マンションのニーズが大きく影響を受けるということは考えにくい」と。その背景には、住宅を選択する際には、価格や立地はもちろんですが、「好み」という要素が加わる。そして、国内を見渡すと、新築を「好む」人が多いという現状が指摘されていました。
それを聞いたとき、ある調査を思い出しました。それは国土交通省が、毎年度、住宅購入者を対象に行っているものです。購入した住宅を選択した理由などについて聞いています。
今年3月に公表された12年度調査(調査対象は11年4月〜12年3月に住宅を購入して入居した人)を見ると、分譲住宅を購入した人がその住宅を選んだ理由は、「新築住宅だから」の回答率が6割以上に上ります。回答率は、「価格が適切」、「立地が良い」を抑えてトップです。では、なぜ中古住宅にしなかったのかを聞くと、「新築の方が気持ち良いから」の回答率が7割を超えます。これも最多回答です。こうした結果は過去数年見ても、ほとんど変わりません。毎年、この調査結果を見るたびに、「好み」の力は偉大だなぁと思います。
そうした価値観が変化する可能性はあるのでしょうか。前回、前々回のこのコーナーでもその一端を紹介しましたように、政府は、中古流通促進策を矢継ぎ早に打っています。マンション事業を主力とする企業がストック事業を強化する動きなどもありますし、リノベーションという言葉が盛んに取り上げられ、一般の方にとっても大分、聞き慣れてきたように思います。もしかしたらその当たりの効果が、今後、出てくるかもしれません。
いずれにしても、人口動態の変化はある程度、統計的に見通すことができるけれど、人の価値観の変化はなかなか、予測できないものです。(編集部Y)