住新記者のひとりごと

環境対応効果の数値化

明確な経済メリットに反響

 東日本大震災以降、エネルギー関連機器の導入をはじめとする環境対応を付加価値として採用する住宅が増えています。以前から取り組む企業は数多くありましたが、震災以降の消費者の節電意識などの高まりが、より加速させたように思います。

 最も代表的なのは、太陽光発電システムではないでしょうか。電気代の削減につながりますし、余剰分は買い取ってもらえる。居住者にとってメリットが分かりやすいものです。

 太陽光発電は、マンションへの導入も増えています。共用部の電気に使うものや全量を売電するもの、また、戸単位で利用して余剰電力は売電できるものもあります。

 タカラレーベン(東京都新宿区)は戸単位利用ができる太陽光発電マンションに積極的に取り組んでいます。以前、その販売現場を取材させていただいたことがありました。住宅新報13年1月29日号に〝太陽光マンション 取り組み広がる 戸別や全量売電など多様化〟と題して、掲載しています。太陽光マンションの販売方法で、担当の方がおっしゃっていた「実際の光熱費削減効果を例示すると、大きな反響がある」という言葉はとても印象に残っています。具体的に数字で効果を示せるのが、大きなPRになるということです。

指標化が難しいパッシブ手法の効果

 一方、環境対応の1つとして、風や光など、自然エネルギーを生かす建築手法、パッシブデザインを取り入れた住宅も多く出ています。つい先日は、細田工務店(東京都杉並区)が風の力を生かそうと計画した戸建て分譲地について、取材させていただきました。これは、住宅新報13年5月14日号〝グローイングスクエア狛江 緑道沿いで風を生かす〟に掲載しています。

 風の流れについて、周辺エリアを含めて解析したうえで、計画したということですが、記者としては、その風を生かした効果を具体的、かつ客観的な指標で紹介したいものです。「例えば各住戸のエアコンの消費電力削減にどれくらい効果があるのかな」と思いましたが、「暮らし方などにもよるので、一定の指標で示すことができない」と。モデルハウスで風の効果を体感できるようにすることなどで、「納得感をいただいた」とのことでした。

 そんな中、大京(東京都渋谷区)は同社がパッシブ手法を採用して供給したマンションで行っていた、同手法に関する実証実験結果を公表しました(住宅新報13年5月21日号〝グリーンカーテンが節電に〟)。パッシブ手法の採用が、エアコン使用量の削減につながったと結果を報告しています。大京としては、パッシブ手法の効果を見える化することで、今後、同手法を導入した物件の販売現場でわかりやすく説明しようという狙いがあります。PRツールという考え方ではありますが、一般の方に対して、パッシブ手法に関する認識を広げていくためにも、意義のある取り組みのように思います。

 もちろん、実験対象となった物件での効果が、その他の物件にそのまま当てはまるわけではないので、客観的な指標となりうるには、色々な物件での実験が必要かと思います。大京としては、パッシブ手法導入効果に関する実験などは引き続き、続けていく考えのようです。データが蓄積され、わかりやすい指標が作られることを期待したいところです。(編集部Y)