総合

大言小語 物語の担い手

 8月末、高校生が考える「空き不動産活用コンテスト」の最終審査が行われた。明海大不動産学部が主催し不動産業界団体などが後援した。2回目の今回は「豊かな暮らし」をテーマに132作品の応募があり、「こども食堂」に食材提供する農場として活用する提案が最優秀賞に輝いた。このほか、推し活拠点や中山間地域の〝まちの縁側〟など、ともすれば〝負動産〟と敬遠される空き不動産の可能性をポジティブに捉え、コミュニティ再生や産業促進の起爆剤に転換しようとするアイデアが光った。

 ▼さて、時に国のリーダーは、東京一極集中の是正と共に、地方創生や地域活性という物語の語り手となる。地域の活力なくして国の成長なし、ということだろうが、その道のりは見えにくい。各自治体が中心となって再生の物語を描き、当事者を巻き込んでいく努力が前提となるとしても、号令役の覚悟や方針が揺れやすければ歩を進めにくくなる。

 ▼若者の構想力に感嘆してから1週間、時の首相が降板を決めた。選挙結果や求心力の低下を踏まえたものだろうが、未来志向の決断となったのか。「立て直したいのは自民党ではなく日本」。テレビコメンターの発言がネットで共感を集めたというが、当のリーダーたちに届いているだろうか。看板の交代が目的ではない。未来志向の地域の物語が紡がれていくためには、その担い手となる生活者の当事者意識がより重要となる。