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大言小語 変節ではなく礼節を

 マニフェストに書いていなかった消費増税の実現に政治生命をかける野田首相。なぜ、そんなおかしなことになったかの説明はない。国民も悪い。「財務省の官僚に取り込まれた」など安っぽい批評で分かった気になっている。野田氏は政権交代選挙となった09年8月の街頭演説で「消費税を上げても白アリ(天下り官僚)に食われてしまう。天下り法人の退治が先」とまで言い切っていただけに、何が彼を変節させたのか、そこが知りたい。

 ▼消費税を上げても国の税収全体が増える保証はない。事実、97年に3%を5%に引き上げたが、それ以降、税収が97年度の54兆円を上回ったことは一度もないのだ。この不況下に増税したら日本経済はどん底に落ちてしまうのではないか。増税以外に財政危機を救う道は本当にないのか。そこが知りたい。

 ▼30年には50代男性の4人に1人が単身世帯になるという。要因は生涯未婚率の上昇。80年に男性2.6%、女性4.5%だったそれが、10年には男性20.1%、女性10.6%まで上昇。30年には男性の生涯未婚率が30%にもなると予想されている。

 ▼昔は結婚するのが当たり前で、子供が生まれ、親類が増えていった。今後、生涯独身の単身世帯が増えれば、家族という社会の核が孤立化する。日本国民全体の絆が脆弱化しないか心配である。国民を束ねなければならない首相には変節ではなく、国民への礼節を望みたい。