総合

大言小語 専門資格者の活用

 ▼マニアを除くと、資格試験に挑戦するのは、現在の仕事・業務に必要であるか、目指す職業に欠かせないからだろう。2つ、3つと難関試験を突破して幅広く活躍する人もいるが、多くは一つの資格で専門分野を深く掘り下げることで職業を成す人が大半だ。

 ▼しかし、社会から求められる資格者を十分に生かし切れていない分野もたくさんある。その代表は看護師。何かの理由で看護現場を離れた後、復帰しない人が54万人いるといわれる。高齢化が進み、看護師の持つ知識と経験を求める需要が限りないだけに、もったいない。

 ▼その人材を活用しようと、建築設計の分野で「メディカルアーキテクト」を提唱しているのがドムスデザインの戸倉蓉子代表。看護師から一念発起して建築分野に転じ、女性だけの建築デザイン事務所を設立。病院建築と集合住宅に絞って事業を展開している、この分野の先駆けである。退職看護師を活用するため、「彼女たちに建築を学んでもらい、住環境分野で看護師の知識と経験を発揮してもらうために、かっこいい職場を用意してあげようというものです」と話す。

 ▼住環境と健康・医療の問題は密接に関係する。健康住宅という考え方があるし、患者に快適な病院建築デザインもある。それは住宅・不動産分野とも直接結び付く。専門資格者の持つ知識と経験は意外な分野で必要とされ、有機的に結びついていることを意識したい。