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大言小語 予期できないゆえに

 予期しない大規模な自然災害が続く。記録的豪雨で鬼怒川が決壊し、茨城県常総市の住宅地が濁流にのみ込まれた光景は改めて自然の猛威を知らしめた。 ▼これまで、関東で多くの人たちが近く起こるかもしれない自然災害として強く意識していたのは首都直下型地震であろう。それだけに今回の災害は関東の人たちを震撼させた。まさに予測できない災害が多発し始めた日本だが、戦後関東は比較的大きな災害を逃れてきた感がある。

 ▼その関東にある河川で最も距離が長いのが利根川だが、江戸時代初期に家康の号令により、東京湾に注いでいた河口を太平洋側にもっていく東遷工事が行われたことは有名だ。度重なる氾濫で一大湿地帯になっていた江戸を都市として発展させるため、時の権力者は川の流れまでも変えてしまう。今回決壊した鬼怒川は、その東遷工事の折に利根川に注ぎこむ河川に変えられた。江戸時代以前は香取海に直接注いでいたが、下流部で利根川と合流するようになったことで水量が増えた。もともとの鬼怒川はその穏やかな流れを意味して「衣川」または「絹川」とも呼ばれていたという。

 ▼国土交通省関東地方整備局の資料によれば、関東は9都県(東京、千葉、埼玉、神奈川、群馬、栃木、茨城、長野、山梨)で、全国の約1割を占める面積に4割近い人口と経済(GDP)が集積している。関東一極集中は危険である。