マンション・開発・経営

社説 東京都心は再開発ラッシュ 魅力向上へ地域性生かそう

 東京都心部が今、再開発ラッシュを迎えている。各プロジェクトは、高度成長期に形づくられた都市基盤を50年ぶりに更新し、将来の継続的な活性化につなげていく重要な役割を担う。そのため、都市の未来像を意識した街づくりが求められている。

 プロジェクトは超高層などの大型ビルを核とした高度業務機能と住宅、商業・文化公益施設などで構成するものが大半を占める。いずれも都市再生事業であり、国家戦略特区や東京都のアジアヘッドクオーター構想と連動したプロジェクトである。日本経済をけん引する都市・東京の国際的な都市間競争力を高めるための機能・施設をそろえ、外国人・外国企業が働きやすく、暮らしやすい都市環境づくりを目指した内容である。

〝金太郎飴〟は避けたい

 だが、東京都心部といっても地域ごとに伝統的な風土や歴史的な背景があり、独特の雰囲気を醸し出した街として今日に至っている。その地域特性を生かした再開発、街づくりの内容であるかがこれから問われてくる。どこも似かよった〝金太郎飴〟のような街が林立するようでは、東京の将来はおぼつかない。都市基盤を更新するだけでも強い都市づくりではあるが、今以上に魅力ある都市・東京とするには不十分である。

 訪日外国人観光客が年間約2000万人まで増加した。都内各地、JRや地下鉄などの電車内にも各国からの観光客の姿が目立つ。定番の観光地・浅草、銀座だけでなく、渋谷のスクランブル交差点、新宿西口の思い出横丁など意外なところが新たな人気スポットとなっている。着飾った場所ではなく、日本人が普段着で働き、癒す場所である。ネット時代を迎え、観光客の動きが変わってきたことを映し出している。

多様な顔をもつ街

 こうした傾向は再開発事業にも少なからず影響を与えていくことになる。最近の再開発事業は数多くの大小地権者と、保留床を購入し、実質的な資金源となる参加組合員(ディベロッパー)で構成する再開発組合施行の事業が増えている。少数地権者による建て替えではなく、地域・町内を巻き込んだ事業だ。商店や飲食街などを取り壊す事態にもなるが、昔から続いてきた街の面影、雰囲気を後世に伝える努力も必要だろう。

 金融都市・東京ではなく、今でも多様な顔を持つ東京をもっと光輝かせる街づくりが求められる。東京には先端技術だけでなく、食、アニメ、芸能など世界から注目される様々な芸術・文化がある。既に伝統や個性を意識、重視した街づくりの取り組みもあるが、まだ数は少ない。地域特性を生かした事業が増えることで東京全体の魅力が高まる。経済合理性だけではなく、都市の魅力という視点が街づくりには欠かせない。将来の活力のために知恵を絞るときである。