市区町村役場での調査での3回目。宅地開発課や土地区画整理課、景観課などの都市建築の関連課にも対象不動産の建築に関する制限や緩和を確認していく。対象不動産が分譲地や区画整理地にあれば該当課で開発許可や仮換地の年月日や公示番号など概要(調書)を確認すると共に計画図面などの図面類、擁壁があるならその安全性を確認できる書面等を取得していく。
景観課では景観条例の内容を確認。重点地区にあるなら建築の際の協議と制限について、買主の不動産利用法を想起しながら担当者からヒアリングをしておきたい。その他にも条例等で建築の制限緩和に関係するものがあれば、担当課でヒアリングをしよう。
続けて上下水道課等でライフラインを調査する。ただ、担当課が市区町村役場の庁舎外であったり、都道府県の広域自治体が管轄している場合は別な庁舎とある。離れている場合はアクセスに時間がかかるので、事前に場所を調べておくのが効率的だ。上下水道調査では前面道路の埋設管、引き込みの有無、埋設管の管径、引き込み費用、下水道なら汚水雑排水と雨水が合流菅か分流菅か、分流のときの雨水の処理方法、規模の大きな建物を建築する場合は雨水桝の設置について確認する。これらは重説事項ということもあるが、利用にも影響するので把握しておこう。
また、上水道で井戸水を利用しているなら保険衛生関係の担当課で利用や管理条件を、下水道で浄化槽を利用しているなら将来の交換撤去や建築位置との関係で建築計画概要書の取得や埋設位置を把握することも必要となる。
なお、前面道路に上下水道菅が埋設されているからと言って引き込みし利用しているとは限らない。現地や売主へ確認しておこう。筆者も前面道路の上水道を利用しているかと思いきや、実は井戸水を利用していた事例があった。注意したい。
防災課では洪水や内水、高潮のハザードマップを取得すると共に浸水履歴があるなら確認をしておこう。床上、床下浸水や道路内冠水のデータを見ておこう。
文化財課では埋蔵物包蔵地に該当するか否か、それとも近接地かを確認する。該当地か近接地なら届出の方法などをヒアリングしておく。市区町村役場によっては遠く郷土博物館内にあることもあるが、電話・ファクスで確認できるので尋ねてみよう。資産税課では登記の際に必要となる対象不動産の評価額が記載された評価証明書を取得。
なお、固定資産税等の税額が記載される公課証明書に評価額も記載されるなら公課証明書でも構わない。取得しておく。最後に庁舎1階でフロア図を見直して対象不動産に関係する担当課がないかを最終チェック。すべて調査し尽くしたと確証が持てたら市区町村役場での調査は終了だ。
【プロフィール】
はたなか・おさむ=不動産コンサルタント/武蔵野不動産相談室(株) 代表取締役。
2008年より相続や債務に絡んだ不動産コンサルタントとして活動している。全宅連のキャリアパーソン講座、神奈川宅建ビジネススクール、宅建登録実務講習の講師などを務めた。著書には約8万部のロングセラーとなった『不動産の基本を学ぶ』(かんき出版)、『家を売る人買う人の手続きが分かる本』(同)、『不動産業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』(技術評論社)など7冊。テキストは『全宅連キャリアパーソン講座テキスト』(建築資料研究社)など。