それぞれの想いを抱いた新しい年がスタートし早くも一カ月が過ぎた。不動産女性塾(北澤艶子塾長)は1月23日、新年会を兼ねた新春セミナー(第37回)を東京・明治記念館で開き今回も結束力は強く80名以上の参加者を集めた。 第一部のセミナーには昨年、(株)まち・ひと・しごと研究所代表取締役と伊藤忠商事取締役に就任し民間人としての新しい人生をスタートした伊藤明子氏を講師に招き、第二部では北澤塾長、武藤正子副塾長、東福信子理事の3氏による歌会スペシャルライブが行われた。
伊藤氏は22歳の建設省(当時)入りで始まった38年間に渡る役人生活を振り返り、女性が本省の課長、局長(住宅局)、内閣官房地方創生総括官補、消費者庁長官などを務める苦労を赤裸々に語ったが、そこには30歳で結婚し、2人の子供を育て、父親の介護も果たすという一人の女性としての人生も熱く重なっていて、筆者にとってはこれまで聞いた伊藤氏の講演の中で最も心を揺さぶられるものとなった。
第二部のスペシャルライブでは東悠エステート社長の東福氏が「明日はどうなるか誰にもわからない。だから涙とギターを道連れにして夢みていればいいのさ」という歌詞で「ケサラ」を、続いてすまいる情報光が丘社長の武藤氏が最も有名なアルゼンチンタンゴ「ラ・クンパルシータ」を披露、そして取りは北澤商事会長の北澤塾長がシャンソン「ラストダンスは私に」を切々と歌い上げた。3氏の歌声は聴く者の心を一瞬にして捉え、また女性ならではのあでやかさがあふれ新春にふさわしい催しとなった。
それぞれのスタート
新しい人生が始まるという意味では女性塾メンバーでこの日参加していた時田久恵氏もその一人である。時田氏はこれまで(株)アルファ―取締役営業部長という立場で女性塾に参加していたが、このほど独立し東村山市にリスぺ・コンサル(株)を立ち上げた。時田氏には本紙21年6月22日号の「凛として輝く女性たち」という不動産女性塾メンバーによる連載に寄稿していただいたが、その中でこう語っている。
「縁ある人々の幸福のため、不動産業が社会に善のエネルギーを送り続けられるよう、今後は50年以上住む地元東村山市に恩返しできる仕事もしていきたい。(中略)常に元気でいること。難しい仕事も断ることなく向き合うこと。そんな姿勢で33年が経ちました。その心が変わらない限り、誰かが求めてくださる限り仕事に終わりはありません」
既にこの頃から抱いていた独立の夢を果たし、今後は相続や空き家活用、空室の多い賃貸物件など〝地域の困りごと相談〟を目指して頑張るという。実は不動産女性塾に参加している女性経営者のほとんどが「地域のために貢献したい」という想いを抱いている。だからこそ結束力があるのだ。この、地域に貢献したいという想いこそ時田氏の言う〝善のエネルギー〟で、人と人とが空回りしている今の社会が人間的な潤いを取り戻す力ともなる。
「地域と共にあるのが不動産業」という北澤塾長の熱い想いでスタートした女性塾は今年11月に満8年となる。
「地域への感謝と使命感を持ち続けられる人が不動産業に向いており、だから不動産業は女性にとっての天職になる」との強い想いが不動産女性塾の礎となっている。
伊藤明子氏のようにキャリアとしての仕事と一人の女性としての務めを気負うことなく、それでいて見事に成し遂げる女性ならではの粘り強さも今の社会には欠かせない。住まいは生活の中心にある。そこを担う不動産業に女性たちの熱い想いとしなやかな力が加われば、今年は日本再生スタートの年になるという筆者の夢も幻ではなくなると思うのだが……。