国土交通省の川合紀子不動産業課長は3月18日、歴代不動産業課長が登壇してきた全国不動産コンサルティング協会と全国空き家相談士協会共催の不動産コンサルティング実務セミナーで講演し、改正空き家法の趣旨を説明すると共に、空き家対策における不動産業の役割に強い期待を表明した。
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改正法は改正前の空き家法(15年5月施行)が主な目的としていた特定空き家の除却促進に加え、周囲に悪影響を及ばすようになる前の「活用拡大」と適正な「管理の確保」を目的に昨年12月に施行された。
川合氏は講演の冒頭で、「今日は〝不動産業における〟空き家対策の推進ということでお話ししたい」と強調した。
これには、今回の改正を機に不動産業界にはこれまで以上に空き家対策に取り組んでもらいたいという川合氏の願望がひそんでいる。というのも、これまでの空き家法が目的としていた除却促進は行政代執行など主に行政が関わる仕事だが、新たな柱とした「活用」と「管理」は当然不動産業者の仕事となるからである。
支援法人制度に期待
その川合氏が説明に最も大きな時間を割いたのは、新設された「空き家等管理活用支援法人」制度だった。これは、「空き家等活用促進区域」と並ぶ改正法2本柱の一つで、自治体(特別区含む市町村)が空き家の管理や活用に取り組むNPO法人、社団法人、事業会社などを「支援法人」として指定し、官民連携で空き家対策を推進していこうというもの。多くの自治体では担当職員が不足し、所有者への十分な働きかけができていないことが背景にある。簡単に言えば不動産実務に詳しくはなく、マンパワーも足りない自治体の手や足となって民間が業務をサポートするための制度である。
川合氏は「支援法人は必ずしも不動産関係の団体とは決まっていませんが、やはり様々なノウハウをお持ちの皆さん方の力をぜひお借りしたい」と不動産業者による空き家ビジネスへの積極参入を呼び掛けた。そして、自治体は支援法人を複数指定することも可能と語り、「相続問題に強いとか、空き家利用希望者とのマッチングが得意とか、移住や二地域居住問題に詳しいとか、それぞれの特徴を生かしながら所有者からのどんな相談にも対応できる体制を全国規模で整備していきたい」との構想を示した。
一方、セミナー開催に当たってあいさつした全国空き家相談士協会の林直清会長は「相談士協会は9年前に設立され、コロナ禍という試練もあったが空き家相談士の登録者は1750名に達し、今年中には2000名を超える予定。相談士の70%は宅建業者だが、残りの30%は建設、解体、リフォーム会社と様々で、全国の自治体職員、弁護士、司法書士など士業の人たちもいる」と説明。まさに、川合氏が構想する「どのような相談にも対応できる全国規模の体制づくり」と符合する態勢だ。
ただ川合氏はこうも指摘した。「改正法が効果を発揮するためには二本柱である〝活用促進区域〟と〝支援法人〟の両制度をいかに連携させるかがポイントで、街づくりという大本を担う自治体の知恵の見せどころでもある」と。
また川合氏は「〝不動産業による〟空き家対策の推進に向けた今後の取り組み(案)」として、官民一体で取り組む施策パッケージ「不動産業による空き家対策推進プログラム(仮称)」を今年中頃までに策定する方針であることも明らかにした。
空き家抑制に向け官民が目指すべき方向性を共有しつつ、空き家の相談対応から管理・利活用・流通に至るまでの取り組みを一気に加速させる狙いだが、官民の役割分担の明確化と連携の綿密さが鍵を握る。