新年度が始まって3カ月。新卒社員の「退職代行」がニュースで目を引くなど、人材マッチングが課題となる時代だ。企業にとって採用後の定着やスキルアップにつながる環境づくりこそ正念場。ただ、若い人材の獲得競争にばかり目を向けるのではなく、既存プレーヤーの働きやすさを追求し、人材強化を図る道もあると思う。
▼大東建託リーシングは5月、育児・介護などのライフイベントにより、従来の勤務形態での就業継続が困難となる従業員の新たな働き方を支援するため、「両立支援型店舗」の運営を開始した。土日休日・時短営業・完全予約制を導入した店舗とすることで、プライベートな時間を確保。今後、勤務対象者を介護中の従業員などに広げると共に、顧客の来店しやすさにつなげる課題抽出を行う構想だ。また、住宅設備の交換などを行うハートリビングサポートは、賃貸管理会社が時間を割きにくい入居前点検等を、家事や育児の〝すき間〟で働きたい女性が担うマッチングサービスを創出。新規入居者からのクレーム回避に貢献すると共に、雇用の確保や業績向上という成果も得る。
▼両者に通じるのは、働き手との縁をつなぎとめようとする企業姿勢だ。全てを従業員目線で整備することは不可能だとしても、事情をくみ、寄り添う姿勢を示せるか否かでは雲泥の差だろう。現有戦略を最適化する創意工夫こそが企業の将来を切り拓く力なのではないか。