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酒場遺産 ▶63 立石 いせや総本店 立石支店 西と東のいせや

 久しぶりに京成立石に行った。城東の「酒都」として名を馳せた立石だが、駅周辺の再開発に向け、昭和遺産のんべい横丁は更地となり、駅前立石仲見世アーケードもシャッター街となりつつある。なんと愚かなことをするものかと思う。中川の本奥戸橋を渡り京成立石駅へ歩いていると、やたらに流行っている居酒屋を見つけた。マンションの一階にあり「いせや」という赤提灯が下がる。入ると「いせや総本店立石支店」とある。吉祥寺の名酒場「いせや」が、下町ど真ん中の立石に進出したらしい。知らなかった。内装は安手のビニールクロスに蛍光灯と素っ気ないのだが、壁に下がるメニューは、まさに「いせや」のもの。もつ焼き一串100円という値段は、ここ下町でも安い。そして串ものは吉祥寺より美味い気がする。店主に聞けば、吉祥寺のいせや総本店から10年ほど前に分家し、いまの店主が引き継いだという。今夕は軽く煮込みとレバー串焼き2本、酎ハイ2杯で1110円。

 メニューは、吉祥寺と同じものも少し違ったものもあり面白い。酒は生ビール500円、アサヒビール大瓶550円、本格レモンハイ300円、ウーロンハイ300円、ハイボール300円、酎ハイ280円、清酒220円。ソフトドリンクもそろえる。串焼きは、鶏モモ、鶏つくね、カシラ、ハツ、タン、シロ、レバーはいずれも100円で2串単位。生シイタケ焼き150円、鶏ナンコツ揚げ200円、セロリ180円、エリンギ焼き100円、メンチカツ300円、ハムカツ300円、イカリングフライ300円、ガツ刺し250円、特製しゅうまい180円、その他「本日のおすすめ」が黒板に書かれる。筆者は吉祥寺いせやの特製しゅうまいが好物だが、隣席の客の皿を見れば、本店は大粒で深い襞の皮が特徴的なのだが、こちらは小ぶりで側面にしか皮がない別物だ。吉祥寺と立石、山の手と下町ではすべてが対照的だが、日の高いうちから愉しむ麦酒ともつ焼きの喜びは同じだ。(似内志朗)