上がる上がる、また上がる。野菜価格の高騰が家計にのしかかってくる。農林水産省の「食品価格動向調査」結果(25年1月20日の週)によると、主要な野菜8品の小売価格は平年比約1.2~3倍となり、キャベツ1キロ(約1玉)500円超という状況が続いている。食卓からサラダが消え、冷凍野菜を利用したメニューにも慣れてきた。
▼高いのは野菜だけではない。光熱費や住宅価格、金利も上を向く。︎上がる物価に対して、賃金引き上げの圧力もかかるが、万人を対象としているとは言いがたい。原資の乏しい中小企業とその従業員は、現実とのギャップに寂しさを覚え、半ばさめていく。通勤時に手元のケータイばかりのぞき込んでいれば、下向きの〝スマホ首〟に加え、ため息が出てくるばかりだ。世のすう勢を嘆き、歌に詠むのも一興か。だが、大衆は気軽で匿名のSNS世界に近づき、暴力的な言葉のブーメランを鬱屈とした社会へ投げ放つ。
▼各国リーダーの顔ぶれも代わり、将来の不確実性は増した。再登板した大国のリーダーは就任早々、パリ協定からの離脱など地球全体の課題解決を巻き戻す方針を打ち出した。気候変動対策を始め、我が国は着実な歩みを進めていけるか。上がる・下がるのシーソーゲームの中で、業界に関わる者の士気が下がれば将来シナリオは暗い。いや、小休止。上がった息を整えて、見方を変える好機なのだろうか。