連日、二転三転するトランプ米国大統領の動向が世界を騒がせている。先行きは極めて不透明だが、トランプ氏の方針自体は、案外その多くが一貫しているようだ。その一つに、安全保障等の国際秩序について「フリーライダー(ただ乗り)を許さない」という主張もある。
▼「フリーライダー」論は、我が国の政策論議の場でも耳にする頻度が増えたように思う。不動産分野でも、例えば二地域居住において「片方の居住地に住民税を払わないのはフリーライドだ」といった批判がある。素朴な国民感情としては理解できるものの、過度な〝受益者負担〟重視は危うい。二地域居住で言えば、表面的な損得に固執し、地域の新陳代謝を放棄するのは、マクロで見れば得策とは言えないだろう。
▼確かに、地域やマンション管理の分野では「共同体の一員としての義務は果たさず、周囲に迷惑を振りまくフリーライダー」の課題も指摘されるが、そうした「悪意ある隣人問題」と「負担の偏り」は混同すべきではない。
▼更に、「フリーライダー」批判は福祉・社会保障の分野でも散見されるものの、高齢者や障害者を短絡的に「フリーライダー」と断じる姿勢は、倫理的にも社会の持続性の面でも容認できない。住宅政策と福祉政策の連携が一層重要度を増す中、住宅業界にも、「より多く払う者『以外』」への対応のあり方が従来以上に問われているのではないか。